ワレリー・ポリャコフ

ヴァレリー・ウラジーミロヴィチ・ポリャコフ：宇宙滞在最長記録保持者

ヴァレリー・ウラジーミロヴィチ・ポリャコフ（Valeri Vladimirovich Polyakov, 1942年4月27日 - 2022年9月7日）は、ソビエト連邦およびロシアの宇宙飛行士であり、医学博士でもありました。彼は、ミール宇宙ステーションに437日18時間という、14ヶ月以上にわたる単独宇宙滞在という最長記録を保持しています。彼の宇宙飛行の経験は、合計で22ヶ月以上に及びます。

宇宙飛行士としてのキャリア

1972年3月22日、ポリャコフは医療グループ3の一員として宇宙飛行士に選ばれました。1988年8月29日にソユーズTM-6で初の宇宙飛行を経験し、ミール宇宙ステーションに240日間滞在して様々な調査を行いました。その後、ソユーズTM-7で地球に帰還しました。

1994年1月8日、ソユーズTM-18によって、史上最長となる有人宇宙飛行が開始されました。このミッションで、ポリャコフは約437日間ミール宇宙ステーションに滞在し、数多くの実験や科学調査を実施しました。この間、地球を7,000回以上周回しました。1995年1月9日には、366日間の宇宙滞在を終え、6年前にウラジーミル・チトフとムサ・マナロフが打ち立てた宇宙飛行の継続記録を更新しました。1995年3月22日、ソユーズTM-20で地球に帰還。

着陸時、ポリャコフはソユーズカプセルから数メートル離れた場所まで自力で歩くことを選びました。これは、長期間の宇宙飛行後でも、人間が火星のような惑星の表面で活動できる能力があることを示すためでした。彼は、火星への長期ミッションにおける微小重力環境が人体に与える影響を調査するために、437日間という長期の宇宙飛行に志願したのです。

2度目の宇宙飛行から帰還後、ポリャコフは宇宙滞在の最長記録を保持することになりました。彼の飛行データは、長期の宇宙飛行においても地上と同じように健康な精神状態を維持できることを示すものとして、研究者たちに利用されています。

ポリャコフは、飛行前、飛行中、飛行後に医学的な評価を受けました。帰還後も6ヶ月間にわたってフォローアップ検査が行われました。これらの検査結果を比較したところ、認知機能に障害は見られませんでしたが、宇宙飛行からの帰還後数週間は、気分が落ち込み、仕事量が増えているように感じていたことが明らかになりました。しかし、ミッション開始から2ヶ月目から14ヶ月目にかけて、ポリャコフの気分は飛行前の水準に安定しました。地球帰還後も、長期的なパフォーマンスの低下は見られませんでした。これらの結果から、研究者たちは、有人火星探査のような長期の宇宙飛行でも、人間の安定した気分と全体的な機能を維持できると結論付けました。

宇宙飛行の記録

ソユーズTM-6 / ソユーズTM-7 - 1988年8月28日～1989年4月27日 - 240日22時間34分
ソユーズTM-18 / ソユーズTM-20 - 1994年1月8日～1995年3月22日 - 437日17時間58分

その後の人生

1995年6月に宇宙飛行士を引退。累計678日以上の宇宙滞在となりました。1999年には、宇宙ステーションにおける国際クルーの飛行シミュレーション実験であるSFINCSS-99に参加しました。モスクワの公衆衛生省副長官として、長期宇宙ミッションの医療面を監督し、ロシア最高医学委員会のメンバーとして、宇宙飛行士の資格認定や選抜にも関わりました。また、国際宇宙研究者協会や国際宇宙航行アカデミーの会員でもありました。私生活では結婚しており、子供が1人いました。

宇宙から戻った後も、ポリャコフは国際宇宙飛行の分野で活躍し、アメリカ、オーストリア、ドイツ、フランスがミール宇宙ステーションで行ったそれぞれの宇宙科学ミッションで「宇宙飛行士調査員」を務めました。

2022年9月7日、80歳で逝去されました。

功績

ポリャコフは、宇宙飛行と学術的な業績により、ソ連邦英雄賞、ロシア連邦英雄賞、レーニン勲章、レジオンドヌール勲章、パラサット勲章など、数々の賞を受賞しました。また、宇宙飛行士の認定に関するロシア主席医学委員会など、宇宙工学に関連する様々な組織のメンバーでもありました。

生命科学、宇宙医学、長期宇宙飛行の研究成果に関する著作も発表しています。

1999年にセルゲイ・アヴデエフ宇宙飛行士が3回のミッションで合計747日の宇宙滞在を達成するまで、ポリャコフは2回のミッションで678日という最長累積宇宙滞在日数を記録していました。

ポリャコフの記録と研究は、人類の宇宙進出に大きく貢献し、特に長期の宇宙飛行が人体に与える影響に関する知見は、今後の有人火星探査計画などに重要な示唆を与えています。

参考文献
ワレリー･Ｖ･ポリャコフ『地球を離れた2年間』WAVE出版、1999年

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