ンコ文字

ンコ文字：西アフリカの独自文字体系

ンコ[文字]は、西アフリカのマンデ語族諸言語のために考案された独自の文字体系です。1949年、ギニアの作家ソロマナ・カンテによって創り出され、マンディンカ語で「私は言う」を意味する「N'Ko」と名付けられました。アラビア[[文字]]に似た右から左への表記法を持ちますが、アルファベットに分類され、独自の母音、子音、そして声調や長短を表現するdiacritic（アクセント記号）で構成されています。

歴史的背景

かつて、アフリカには独自の文字体系が存在しないと誤解されていましたが、実際には17世紀までにアジャミ文字（アラビア[[文字]]を基にした文字）が西アフリカで広く用いられていました。しかし、アジャミ文字はイスラム教の布教を目的として開発されたもので、マンデ語族の諸言語に見られる複雑な声調を完全に表現するには不十分でした。この課題を解決するために、ソロマナ・カンテはンコ文字の発明に挑んだのです。

カンテは、レバノンの著者が記した、アフリカの言語を「鳥の言語のように翻訳不能」と軽蔑的に記述した本を目にしたことが、発明の大きなきっかけとなりました。この経験が、彼を独自の文字体系を創造するという強い意志へと駆り立てたのです。コートジボワールのビンガーヴィルで考案されたンコ文字は、その後カンテの故郷であるギニアのカンカンへと持ち帰られました。

普及と発展

1949年4月14日、ンコ文字は完成を迎えました。現在ではこの日が「ンコ文字の日」として記念されています。完成後、カンテは宗教、科学、哲学に関する文献や辞書をンコ文字に翻訳し、西アフリカのマンデ語圏に広く配布しました。1950年代には、ソビエト連邦との繋がりを通じて東欧からタイプライターが導入され、ンコ文字の使用はさらに促進されました。

ンコ文字の普及は、英語やフランス語圏に囲まれた西アフリカにおいて、マンデ語族話者の識字率向上に大きく貢献しました。特にギニアのマニンカ族では、ンコ文字は文化的アイデンティティの形成に重要な役割を果たし、西アフリカ各地のマンデ語族のアイデンティティ強化にも繋がりました。

現代における使用

2005年時点では、ギニアとコートジボワール（特にマニンカ語とジュラ語話者）、そしてマリ（バンバラ語話者）を中心に使用されています。コーランの翻訳をはじめ、物理学や地理学の教科書、詩集、哲学書、伝統薬に関する解説書、辞書、そして地元紙など、様々な分野でンコ文字による出版物が存在します。ンコ文字は、西アフリカで最も成功した文字体系の一つとして認められています。

ンコ文字による著述においては、「カンベ（言語作法）」と呼ばれる文法が広く用いられています。これは、マンデ語族諸言語間の共通語（リングア・フランカ）を目指したもので、異なるマンデ語族の言語間での相互理解を促進する役割を果たしています。ただし、マニンカ語の影響が強い点が特徴です。

他に、ラテン[[文字]]を拡張した表記法が、歴史的背景や政府の政策によって、多くのマンデ語族諸言語に使用されています。また、アラビア[[文字]]による表記もガンビアやセネガルのマンディンカ語において一般的に用いられています。そして、2024年6月27日には、ンコ語の標準文語がGoogle翻訳に追加されました。

文字体系の詳細

ンコ文字は右から左へ記述され、文字同士は連結して書かれます。母音字、子音字に加え、声調や長短を表すためのdiacritic（アクセント記号）を使用します。diacriticが無い場合は、下降する短い母音となります。また、鼻音を表現するための記号も存在します。さらに、外国語の音を表すためのdiacriticの転用も提案されています。

Unicodeへの収録

ンコ文字は、Unicode 5.0で完全に収録されました。これにより、コンピュータ上でのンコ文字の利用が容易になり、その普及をさらに加速させることとなりました。

関連事項

ンコ語
マンデ語族諸言語

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