ヴァシーリー4世

ヴァシーリー4世シュイスキー

ヴァシーリー4世（1552年9月22日 - 1612年9月12日）、本名ヴァシーリー・イヴァノヴィチ・シュイスキーは、モスクワ・ロシアのツァーリとして1606年から1610年まで在位していた。彼は動乱期における短命の統治者の一人であり、その位に就くまでの複雑な経歴と、その後の権力の推移が注目されている。

生涯

即位以前

ヴァシーリー4世はモスクワ大公家の一族、シュイスキー家の出身で、リューリク朝に由来する大貴族の家系を持っていた。若い頃はイヴァン4世の親衛隊に参加していたが、1584年にイヴァン4世が死去すると、彼はボリス・ゴドゥノフとの政治争いに巻き込まれ、一時的に失脚を余儀なくされた。しかし、彼はその後に復職し、ボリスの下で仕えることになった。

1591年、フョードル1世の異母弟ドミトリーがウグリチでの神秘的な死を遂げる事件が発生する。この時、シュイスキーはドミトリーの死因調査団の一員として事故死とし、その事件に関与することで政治的な影響力を保とうとした。1598年、フョードル1世の死によってリューリク朝は断絶し、ボリス・ゴドゥノフがツァーリに即位した。シュイスキーは彼を支持しつつも、その後の状況が変わることとなる。

即位

1605年4月、ボリス・ゴドゥノフが死去し、その息子フョードル2世が即位する。しかし、シュイスキーはフョードル2世を裏切り、偽ドミトリー1世を支持する立場に転じた。彼はこの偽王子の存在が王位を明け渡すチャンスとなると考えたが、偽ドミトリーが不人気であったため、急速に支持を失うことになった。

1606年5月、シュイスキーは同じく権力を狙う大貴族と共に偽ドミトリー1世を廃位し、殺害。直後に彼自身がツァーリに選ばれた。シュイスキーはリューリク朝の流れを汲む数少ない男系の血筋として、皇位の正統性を持つと見なされており、その選出は多くの期待と共に行われた。

即位後、シュイスキーはドミトリーの死を証明するためにその遺体を遺族から引き取るも、その腐敗具合が奇跡として正当化され、結果的にドミトリーはロシア[[正教会]]に列聖されることとなった。

治世と混乱

ただし、ヴァシーリー4世の治世は権力や統治の不確実性に悩むことになる。彼は、多くの大貴族からの疑念を払拭するために勢力に譲歩しつつ、政治的な安定を図ろうとした。しかし、流動的な動乱期においては難しく、様々な反乱や偽王子の出現が続く。

特に1607年のイヴァン・ボロトニコフの反乱は一時的に彼の政権を脅かし、さらには偽ドミトリー2世と称する者が現れ、その後も混乱が続いた。シュイスキーはスウェーデンに援助を求め、領土を譲渡するという条件を受け入れたが、これがポーランド軍の介入を招く結果となった。

退位

1610年、シュイスキーの甥であるミハイル・スコピン＝シュイスキーが急死。彼の権威を認められたミハイルの死後、シュイスキーは反対派から激しい反発を受け、内部崩壊が進行した。悪化する状況の中、シュイスキーは親ポーランド派大貴族の反乱によってツァーリの地位を奪われ、最終的には修道士となった。

ポーランドへの派遣と死

1611年、彼はポーランドに派遣され、新たなツァーリとしてヴワディスワフ王子の推戴を求めるが、この過程で捕虜となり、1612年9月にゴスチニンで死去した。ヴァシーリー4世の退位後、ロシアでは数年間、ツァーリが不在の状態が続き、動乱時代の不安定さを象徴する存在となった。

人物像

彼は低身長で目が見えにくい状態だったとも言われ、性格は非常に迷信深く、権謀術数に長けていた。自身の家系の正統性を利用しながら、ツァーリの位を狙った彼の行動は、周囲からの信頼を集めることができず、内外からの疑念を生む結果となった。特に甥ミハイルの人気が高まり、彼との対立がシュイスキー政権の不安定化を招いた。

このような背景から、ヴァシーリー4世は権力を巡る激しい競争の中で失脚し、最終的にその運命を全うすることになった。

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