ヴァッフェントレーガー

ヴァッフェントレーガーの概要

ヴァッフェントレーガー（Waffenträger）は、第二次世界大戦の終息間際にドイツで開発されたいわゆる自走式対戦車砲で、直訳すると「武器運搬車」となります。この全体像をつかむためには、特にGeschützwagen 638/18 SF PAK.43 Ardeltモデルに焦点を当てて解説することが重要です。

開発背景

1942年、ドイツ軍は10.5cm軽野戦榴弾砲を装備し、歩兵支援を目的ためたヴァッフェントレーガーの開発指令を出しました。当初の計画には、ホイシュレッケやIV号b型自走榴弾砲が含まれていましたが、仕様の複雑化により開発は困難を極めました。このため、対戦車戦闘に特化した新たなヴァッフェントレーガーが求められることになります。

従来の武器運搬車は、地面に砲を下ろして使用する形態でしたが、新型は車上からの射撃に特化した設計へと変更されました。この結果、PaK 43を単独で運用する簡易自走砲に近い形態となったのです。

要求仕様

兵器局第4課から出された要求は次の通りです：

• - 武装：8.8 cm PaK 43対戦車砲（360度全周囲射撃可能）
• - 砲弾：即応弾6発と車内に24発を搭載
• - 乗員：4名（操縦手、砲手、装填手×2）
• - エンジン：マイバッハ製100馬力エンジン
• - 最高速度：時速25キロ
• - 装甲：10mmから20mm
• - 重量：11.2トン

これらの仕様に基づいて、シュタイアーとクルップ社、そしてアルデルトとラインメタル社がそれぞれ試作車を製作しました。前者の試作車では多くの問題が発覚し、後者は完成度は高かったもののコストや生産時間での課題がありました。

最終的には、アルデルト社とラインメタル社が共同で新しい試作車を開発し、これが“Geschützwagen 638/18 SF PAK.43 Ardelt Waffenträger”として量産化されることになります。

設計と生産

この量産型の設計は、アルデルト社社長ギュンター・アルデルト博士のもとで進められました。彼の指導の下、コストと製造工程の簡略化を目指しました。具体的には、足回りにヘッツァーの部品が流用され、大型転輪とリーフスプリング式のサスペンションが採用されました。ただし、ヘッツァーのタイヤ外周にはゴム製リムがない点が異なりました。

当初、100輌が発注されたものの、戦況が悪化したために生産数は限られ、実際には10輌程度の完成が見込まれました。アルデルト博士自身はドイツ国防軍に中尉として任命され、1945年には7輌のヴァッフェントレーガーを率いてソビエト軍と交戦し、戦死したとされています。

戦後の動向

ソビエト軍に鹵獲された一台は、現在クビンカ戦車博物館で展示されています。さらに、3輌がベルリン防衛部隊に納入され、戦闘に使われた形跡が残っています。しかし、アルデルト社自体は戦争の混乱により消滅し、彼らが残した資料のほとんどはクビンカ博物館に依存しているのが現状です。

モデルとしての展開

現在、ヴァッフェントレーガーの模型は複数のメーカーから販売されています。ロシアのアランホビー社が1/35スケールのモデルを展開し、中国のトランペッター社も各種バリエーションを提供しています。ウクライナのACE社製の1/72スケールモデルも好評です。これらの模型は、当時の兵器の詳細を知る貴重な手段となっていると言えるでしょう。

ヴァッフェントレーガーの設計と開発の歴史は、軍事技術の進化と戦争の複雑な状況を象徴しています。

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