ヴァフスルーズニル

ヴァフスルーズニルは、北欧神話の重要な原典である『古エッダ』の『ヴァフスルーズニルの言葉』に登場する巨人です。彼は並外れた知識を持ち、神々の長であるオーディンとの間で、命を賭けた知恵比べを行いました。

オーディンはヴァフスルーズニルに対し、最初の巨人族が誰であるかを問いました。ヴァフスルーズニルは、遠い昔にベルゲルミルという巨人が生まれ、彼がスルードゲルミルの息子であり、アウルゲルミルの孫であることを明かしました。この一族の系譜を語ることで、ヴァフスルーズニルは自身の知識の深さを示しました。

しかし、知恵比べは最終的にオーディンの勝利に終わります。オーディンはヴァフスルーズニルに対し、「バルドルが死んだとき、私は何と息子の亡骸に声をかけるか」という、神のみぞ知る問いを投げかけました。この問いにヴァフスルーズニルは答えることができず、オーディンに敗北し、命を落とすことになりました。

ヴァフスルーズニルは歌の中で「イームの父」とも呼ばれています。このことから、彼が巨人族の中でも特に古い世代に属し、重要な役割を担っていたことが伺えます。

この神話は、知識の重要性と、それを追求することの危険性を示唆しています。ヴァフスルーズニルは豊富な知識を持っていましたが、オーディンの前ではその知識も限界を迎えました。この物語は、知識に対する謙虚さの必要性を教えてくれるとともに、北欧神話の奥深さを感じさせる物語の一つです。

参考文献：
* V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年、ISBN 978-4-10-313701-6。

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