ベルゲルミル

北欧神話において、ベルゲルミルは霜の巨人であり、巨人族の始祖ユミルの血を引く存在です。彼の物語は、神話の創世と巨人族の起源に深く関わっています。

ベルゲルミルの出自

『古エッダ』の『ヴァフスルーズニルの言葉』によれば、ベルゲルミルはスルーズゲルミルの息子であり、アウルゲルミル（ユミル）の孫にあたります。この記述は、彼が巨人族の中でも古い世代に属することを示唆しています。

"大地が作られる前に無数の冬があった、
その頃ベルゲルミルが生まれた、
スルーズゲルミルが彼の父であった、
そしてアウルゲルミルが彼の祖父だった。"

この詩は、ベルゲルミルの誕生が世界の創造以前の時代に遡ることを示唆しており、彼の存在が神話的な時間軸において非常に古いものであることを強調しています。

大洪水からの生存

『スノッリのエッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』によると、ベルゲルミルとその妻は、オーディンとその兄弟ヴィリとヴェーによってユミルが殺された際の大洪水から生き残った唯一の巨人夫婦でした。ユミルの体から流れ出た血は、世界を覆い尽くすほどの巨大な洪水となり、多くの巨人を飲み込みました。しかし、ベルゲルミル夫婦は箱舟に乗ってこの大洪水を乗り越え、生き残ることができました。

この出来事は、巨人族の存続にとって非常に重要な意味を持ちます。ベルゲルミル夫婦がいなければ、霜の巨人の血統は途絶えていたかもしれません。彼らは新たな世代の霜の巨人の祖先となり、神話の世界において重要な役割を果たすことになります。

洪水神話の解釈

ジョン・リンドウやカロリン・ラリントンといった研究者は、スノッリによる洪水神話の記述が、ユダヤ教やキリスト教の伝説から影響を受けているという見解を示しています。これは、北欧神話が他の文化の神話や伝説と相互に影響し合っている可能性を示唆するものです。

ベルゲルミルの物語は、北欧神話における創世、終末、そして再生のサイクルを象徴する要素を含んでいます。彼の存在は、巨人族の起源と存続、そして神々と巨人族との間の複雑な関係を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

参考文献
Faulkes, Anthony (transl.) (1987). Edda (Snorri Sturluson). Everyman. ISBN 0-460-87616-3.
Larrington, Carolyne (transl.) (1996). The Poetic Edda. Oxford World's Classics. ISBN 0-19-283946-2.
* Lindow, John (2001). Norse Mythology. Oxford University Press. ISBN 0195153820.

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