ヴァルナ州

ヴァルナ州：黒海沿岸の歴史と自然が織りなす地

ヴァルナ州は、ブルガリア北東部に位置し、黒海に面した地域です。この州は、その美しい海岸線、豊かな自然、そして長い歴史を通じて培われた文化的な遺産で知られています。州都はヴァルナであり、この地域は古代からの重要な交易拠点として栄えてきました。

地理

ヴァルナ州は、面積3,820平方キロメートルを誇り、黒海に沿って広がっています。ドナウ平原の一部を占め、バルカン山脈の東端に位置しています。海岸線はリアス式海岸となっており、ヴァルナ湖やベロスラフ湖といった美しい湖が点在しています。また、プロヴァディヤ川、デヴニャ川、ベトヴァ川などの河川が流れ、ツォネヴォ人造湖もこの地域の特徴的な地形を形成しています。

黒海沿岸は森林に覆われた丘陵地帯で、崖が多く見られます。ガラタ岬や聖アタナシウス岬といった岬が海岸線を彩り、カムチヤ川とシュコルピロフスカ川の河口の間には、約13キロメートルにわたる砂浜が広がっています。この砂浜には、小さな洞窟も点在しており、自然の美しさを楽しむことができます。

農地が州の60%を占め、特に北部と西部には肥沃な黒土が広がっています。森林は23.1%、市街地は6.8%となっています。天然資源としては、岩塩、石灰岩、シリカ、粘土などが豊富で、これらは地元の化学工業、セメント製造、ガラス製造、建設に活用されています。また、シリカは輸出もされています。ヴァルナ湖の堆積土は、薬効のあるミネラル泥として利用されており、この州には多くの鉱泉も存在します。さらに、ガラタ沖には天然ガス田があり、ブルガリアのガス需要の一部をまかなう計画も進められています。

気候は内陸部では冬は寒く、夏は高温で乾燥しますが、沿岸部では地中海性の穏やかな気候が特徴です。

基礎自治体と行政区分

ヴァルナ州には、12の基礎自治体があります。これらの自治体は、それぞれが独自の特色を持ち、地域経済と文化を支えています。

アヴレン
アクサコヴォ
ベロスラフ
ビャラ
ヴァルナ（州都）
ヴェトリノ
ヴルチ・ドル
ドルニ・チフリク
デヴニャ
ドゥルゴポル
プロヴァディヤ
スヴォロヴォ

州都ヴァルナは、さらに5つの区に分かれています。

アスパルホヴォ
ヴラディスラフ・ヴァルネンチク
ムラドスト
オデソス
プリモルスキ

人口と民族

2007年のデータによると、ヴァルナ州の人口は49万6768人です。そのうち71%が州都ヴァルナに住み、81%が都市部に居住しています。人口密度は1平方キロメートルあたり130人と、全国平均を大きく上回っています。出生率、結婚率、離婚率が高い一方で、死亡率と失業率は全国平均よりも低くなっています。

民族構成は、ブルガリア人が85.3%と多数を占め、次いでトルコ人が8.1%、ロマ（ジプシー）が3.4%となっています。その他、アルメニア人、ロシア人、ウクライナ人、ユダヤ人、ギリシャ人、クリミア・タタール人など多様な民族が暮らしています。近年では、西側諸国からの移住者や、中国人、インド人、アラブ人、アフリカ人などの移民も増加しています。

ヴァルナ州は、かつてトルコ系住民の人権運動の中心地であり、現在の少数民族政党「権利と自由運動」の母体となった「ドランダル・グループ」が活動していました。

宗教は、ブルガリア正教会が83%を占め、イスラム教が9.75%となっています。その他、プロテスタント、カトリック、ユダヤ教、仏教など多様な宗教が存在します。

歴史

ヴァルナ州には、新石器時代から人が居住しており、銅器時代には社会構造や宗教を持った文化が発達しました。この時代には、多くの墳墓が築かれました。紀元前1千年紀にはトラキア人が居住し、後にローマ化されました。現在のヴァルナにあたる場所には、紀元前6世紀に古代ギリシャ人の交易植民地オデッソスが築かれ、トラキア人とギリシャ人の間の交流拠点となりました。

その後、マケドニア王国の支配を経て、ローマ帝国に征服されました。ローマ時代には、マルキアノポリス（現在のデヴニャ）がこの地域の中心地となり、キリスト教が広まりました。6世紀にはスラヴ人が侵入し、民族構成が大きく変化しました。

7世紀には、第一次ブルガリア帝国の中心地となり、その後、第2次ブルガリア帝国の時代には要塞や交易拠点として発展しました。14世紀にはオスマン帝国に征服され、19世紀の露土戦争の舞台ともなりました。

オスマン帝国時代には、トルコ系住民やイスラム教徒が流入し、人口構成が多様化しましたが、19世紀後半には、ブルガリア人が多数派を占めるようになりました。

経済

ヴァルナ州は、外資の流入量がブルガリアで2番目に多く、一人当たりGDPは国内平均を上回っています。失業率も平均を下回っており、個人収入平均は国内で5位となっています。経済はサービス業が中心で、国内の観光収入の30%以上を占めています。

ヴァルナの港は、黒海沿岸と国内水路の物流拠点であり、国際空港ヴァルナ空港、鉄道フェリーターミナル、そしてブルガリア最古の鉄道路線であるルセ - ヴァルナ線が走っています。エネルギー資源開発も盛んで、ガスパイプライン計画も進められています。

製造業は、ヴァルナ-デヴニャ工業地帯やプロヴァディヤに集中しており、農業も重要な産業です。コムギ、果物類、ワイナリーなどが主要な生産物です。また、教育や文化の中心地でもあり、多くの大学や研究機関、博物館が存在します。

観光

ヴァルナは、ソフィア、プロヴディフに次ぐブルガリア第3の都市であり、古代からの歴史と美しい自然が共存する観光地です。考古学博物館には、紀元前4600年-4200年頃の最古の金装飾品が展示されています。ローマ時代の浴場跡や正教会の大聖堂など、歴史的な遺産も豊富です。

また、ヴァルナの北に位置するゴールデン・サンズ・ビーチは、ブルガリアを代表するビーチリゾートであり、夏にはダンスやフォークロアのイベントが開催されます。

環境保護

ヴァルナ州には、多くの自然保護区、国立公園、保存地区が存在します。カムチヤ生物保護区はUNESCOに登録されており、自然の豊かな生態系が守られています。ゴールデン・サンズ自然公園は、美しい自然環境を楽しむことができる人気のスポットです。

主な保護区

カムチヤ 生物保護区（ユネスコ登録）
Valchi prehod
Kirov dol
Varbov dol
Kalfata

国立公園

ゴールデン・サンズ自然公園

保存地区

Rakitnika
Petricha
Slaveikova gora
Yatata
Tulumova peshtera
Vodenitsite
Aladzha Monastery
Snezhinska koriya
Orlov kamak
Pobiti Kamani
Liman
Pregrada
Kazashko
Golyamata kanara
Kamchiyski pyasatsi

自然の景勝地

Gorna i Dolna Kapladzha
Slyapoto kladenche
Byal oman
Urumovo lale
Kuza skoka
Sini vir
Chudnite skali

海岸のリゾート地、ビーチ

ゴールデン・サンズ
聖コンスタンティン・エレナ
ヴァルナ
ガラタ岬
カムチヤ
ビャラ
パシャ・デレ
カラデレ
ベリテ・スカリ


ヴァルナ州は、その多様な魅力で訪れる人々を魅了し、ブルガリアの重要な一部を担っています。

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