ヴァルラフ・リヒャルツ美術館

ケルンを代表する美術館：ヴァルラフ・リヒャルツ美術館

ドイツのケルン市中心部に位置するヴァルラフ・リヒャルツ美術館は、中世から近代までのヨーロッパ絵画を網羅する、歴史と格式を兼ね備えた美術館です。そのコレクションの豊富さ、そして美術史における重要な位置づけから、ドイツのみならず世界中の美術愛好家から高い評価を得ています。

美術館の起源と発展

美術館の始まりは1824年にさかのぼります。ケルン大司教でもあったフェルディナント・フランツ・ヴァルラフが、自身の邸宅と膨大な美術コレクションをケルン市に遺贈したことが、その起源です。1827年にはヴァルラフ邸が公開され、市民に公開されたコレクションは大きな反響を呼びました。

しかし、コレクションの増加に伴い、展示スペースの不足が課題となりました。そこで、学芸員ヨハン・アントン・ランブーの提言を受け、ケルンの実業家ヨハン・ハインリヒ・リヒャルツが建設資金を寄付。1855年から新美術館の建設が始まり、1861年に現在のヴァルラフ・リヒャルツ美術館が開館しました。

その後も、数々の寄付や収集活動によって収蔵品は着実に増加していきました。1976年には、コレクションの一部を分離する形で、現代美術に特化したルートヴィヒ美術館が設立されました。そして2001年、ヴァルラフ・リヒャルツ美術館は新たな建物に移転し、現在に至ります。同年にはコルバード財団からの印象派、新印象派作品の大規模な貸与を受け、コレクションの幅はさらに広がりました。

貴重なコレクションの数々

ヴァルラフ・リヒャルツ美術館の最大の魅力は、その多様なコレクションです。中世絵画、特に14世紀から16世紀にかけてケルンで隆盛を極めたケルン派の宗教画は、世界的に見ても重要なコレクションです。シュテファン・ロッホナーの作品を始め、数多くの名品が展示されています。

また、ルネサンス期の巨匠アルブレヒト・デューラーの『ヤーバッハ祭壇画』(右側パネル) 、バロック期のピーター・パウル・ルーベンスの『聖家族およびエリサベツと洗礼者ヨハネ』、レンブラントの『ゼウクシスとしての自画像』など、各時代の代表的な作品が数多く収蔵されています。

さらに、ロマン主義、印象派、ポスト印象派、そして20世紀初頭のドイツ絵画まで、時代を横断したコレクションは、ヨーロッパ美術史の流れをたどる上で、貴重な資料となっています。繊細な羊皮紙のミニチュア画やデッサンなども含め、そのコレクションの広さと深さは他に類を見ません。

贋作問題と研究

美術館では、コレクションの真贋についても常に厳しい目を光らせています。2008年には、独自の研究によって、クロード・モネ作とされていた作品『On the Banks of the Seine by Port Villez』が贋作であると発表しました。このように、美術館は作品管理に力を注ぎ、コレクションの信頼性を維持することに尽力しています。

まとめ

ヴァルラフ・リヒャルツ美術館は、長い歴史と充実したコレクションを誇る、ケルンを代表する美術館です。中世から近代までの多様な作品を通して、ヨーロッパ美術史の変遷を体感できる貴重な場所と言えるでしょう。ケルンを訪れた際には、ぜひ足を運んで、その魅力を体感してください。

もう一度検索