ヴァロッテ

ヴァロッテ (Valotte)

『ヴァロッテ』は、1984年に世に送り出されたジュリアン・レノンのデビューアルバムです。彼はこの作品で、著名な父親であるジョン・レノンの影響を受け継ぎつつも、独自の音楽世界を切り開き、世界的な注目を集めました。

このアルバムは商業的にも大きな成功を収めました。特にアメリカでのチャートアクションは目覚ましく、ビルボード誌のアルバムチャートで最高17位にランクインする人気ぶりでした。アルバムからのシングルカットもヒットを連発し、ジュリアン・レノンの名をポピュラー音楽シーンに確立しました。特にアルバムと同名のタイトルチューン「ヴァロッテ」は全米シングルチャートで9位に、続くシングル「トゥー・レイト・フォー・グッドバイ」はさらに好調で5位に達する大ヒットとなりました。

その人気は日本にも及び、1985年には、当時日本国内で放送されたホンダ・シティ（初代後期型）のテレビCMにアルバム収録曲が使用されました。このCMにはジュリアン自身も出演しており、「ヴァロッテ」「セイ・ユア・ロング」「トゥー・レイト・フォー・グッドバイ」といった楽曲がBGMとして流れ、日本における彼の知名度向上に大きく貢献しました。

アルバムは全部で10曲から構成されています。楽曲の大部分はジュリアン・レノンが手掛けていますが、「ヴァロッテ」や「オーケー・フォー・ユー」ではジャスティン・クレイトン、カールトン・モラレス、カーメロ・ルッジェリといった共作者との共作も含まれます。また、「ジェシ」は外部のソングライター、チャイナ・バートンによる提供曲です。これらの楽曲は、キャッチーなメロディとジュリアン特有の温かみのあるボーカルが特徴で、当時のAORやポップスのリスナーに広く受け入れられました。

『ヴァロッテ』のサウンドを支えたのは、ジュリアン自身の演奏能力に加え、レコーディングに参加した豪華なミュージシャンたちです。ジュリアンはボーカルのほか、キーボードやベース、シモンズ・ドラムも担当していますが、スタジオにはバリー・ベケット、デヴィッド・リボルト、ピーター・ウッドといった一流のキーボーディストが参加。ギターパートにはジャスティン・クレイトン、カールトン・モラレスに加え、マーティン・ブライリーやデニス・ハーリングといったプレイヤーが彩りを添えました。リズムセクションは、デヴィッド・フッド、マーカス・ミラー、カーマイン・ロハスといった実力派ベーシストと、ロジャー・ホーキンス、スティーヴ・ホリーといったドラマー、そしてパーカッションのラルフ・マクドナルドが堅固な土台を築いています。

さらに、多彩な楽器奏者がアルバムに深みを与えています。トゥーツ・シールマンスが印象的なハーモニカを奏で、「ロンリー」でのマイケル・ブレッカーによる情感豊かなサクソフォーンソロは特に有名です。他にもロニー・キューバー、ローレンス・フェルドマン、ジョージ・ヤングといったサクソフォーン奏者、ジョン・ファディス、ジョー・シープリーらのトランペット奏者がホーンセクションを担当。ローリィ・ドッド、エリック・トロイヤーといったベテランによるバックボーカルも、サウンドに厚みを加えています。

このように、『ヴァロッテ』はジュリアン・レノンの才能と、彼を支えた多くの優れたミュージシャンたちの力が結集して生まれた作品であり、彼が単なる「有名人の息子」ではなく、一人の優れた音楽家であることを世界に証明した記念碑的なアルバムと言えるでしょう。この成功が、その後の彼のキャリアにおける重要な出発点となりました。

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