ヴァンヂャケット

株式会社ヴァンヂャケット：日本のファッション史に刻まれた伝説的ブランド

株式会社ヴァンヂャケットは、日本のアパレル業界において、1950～70年代に大きな影響を与えたブランドとして知られています。創業者の石津謙介氏が大阪で創業した同社は、アメリカントラディショナルスタイル、特に「アイビー・ファッション」を日本に紹介するパイオニア的な役割を果たしました。

アイビーファッションの隆盛とみゆき族

1950年代からアメリカンカルチャーを取り入れ、ニューイングランド風のファッションを「アイビー」と名付け、VANブランドとして展開。1960年代には、東京・みゆき通りに集まる若者たち「みゆき族」を中心に爆発的な人気を博しました。VANの紙袋を持つことさえステータスとなるほど、若者文化を象徴する存在となりました。

この時代のVANは単なるアパレル企業ではありませんでした。アイビールックやみゆき族というムーブメントを生み出し、Time, Place, Occasion（TPO）という概念を浸透させるなど、メンズファッションとライフスタイル全般に大きな影響を与え、独自の文化を築き上げました。青山に本社ビルを構え、企業内アメリカンフットボールチーム「VANGUARDS」を持つなど、時代の最先端をいく企業として若者から絶大な支持を集めていました。

栄光と挫折：急成長から倒産へ

1975年には452億円という売上高を記録するなど、絶頂期を迎えましたが、オイルショックによる不況やアパレル業界の競争激化、そして新しい顧客層を獲得できなかったことなどが重なり、1978年には会社更生法を申請、事実上倒産という事態に陥りました。負債額は約500億円にのぼりました。

再建とブランドの継承

倒産後、社員OBらの尽力により、1980年に新会社が設立され、ブランドは再建されました。創業者は経営には関わらず、新たな体制のもと、VANブランドは現代に受け継がれています。近年では、様々なブランドとのコラボレーションも展開し、その歴史と伝統を再評価する動きもみられます。

VANが築いた文化：VAN99ホールとVANファミリーショップ

VANの文化は、アパレルだけにとどまりませんでした。1972年には、自主企画・自主運営の劇場「VAN99HALL」を開設。99席という規模ながら、様々な文化活動の拠点となりました。また、ファミリー層向けのショップブランド「VANファミリーショップ」も展開されましたが、品質管理や従業員教育の問題から、2006年に運営会社が倒産するという結果に終わっています。

歴史に残るキャンペーンの数々

VANは数々のキャンペーンを展開し、その時代の若者の心を掴みました。「TAKE IVY」キャンペーンでは、アメリカのアイビーリーグ大学を舞台に撮影された写真集を制作し、アイビーファッションの聖典ともいえる存在となりました。その後も、「CAPE COD SPIRITS」、「DISCOVER AMERICA」、「COME ON SPORTSMAN！」など、時代を反映した魅力的なキャンペーンが展開されました。これらのキャンペーンは、VANというブランドの個性と、時代の空気を鮮やかに反映したものです。

VANと日本のファッションシーン

VANヂャケットの歴史は、日本のファッション史における重要な一ページです。高度経済成長期に流行したアイビーファッションを牽引し、独自の文化を築き上げたVANは、多くの人々に憧れと影響を与えました。その成功と失敗は、現代の企業経営にも多くの示唆を与えてくれるでしょう。

脚注

本記事の内容は公開情報に基づいて作成されています。

外部リンク

株式会社ヴァンヂャケット公式サイト

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