ヴァンデンバーグ宇宙軍基地第4発射施設

第4発射施設 (SLC-4)

アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるヴァンデンバーグ宇宙軍基地内に設けられている第4発射施設（Space Launch Complex 4、通称SLC-4）は、長年にわたりアメリカの宇宙開発を支えてきた重要な拠点です。この施設はSLC-4WとSLC-4Eという二つの発射台を備えていますが、現在はその役割を大きく変え、片方は打ち上げに、もう片方は打ち上げられたロケットの機体を着陸させるために利用されています。特に近年は、民間宇宙企業スペースXがファルコン9ロケットの運用に使用しており、打ち上げと再利用ブースターの回収という、現代宇宙輸送の最前線を担っています。

栄光の歴史：アトラスとタイタンの時代

SLC-4の歴史は古く、1963年に運用が始まりました。当初はアトラスやタイタンといった大型ロケットのために使用され、その役目を2005年まで継続しました。施設内の二つの発射台は、元々はPALC-2-3（現在のSLC-4W）およびPALC-2-4（現在のSLC-4E）という名称で、アトラス・アジェナロケットの打ち上げを目的に建造されました。その後、より大型のタイタンロケットを扱えるように改修され、この際にSLC-4という名称が付けられたとされています。

SLC-4Eの軌跡

SLC-4E（旧PALC-2-4）は、1964年8月14日に初めての打ち上げを行い、アトラス・アジェナDを用いてKH-7衛星を軌道に乗せました。1967年6月4日に27機のアトラス・アジェナを打ち上げた後、施設は一旦その活動を停止します。

1971年、施設は再開され、マーティン・マリエッタ社製のタイタンIIIロケットに対応するために改修されました。タイタンIIIDの初飛行は、1971年6月15日、最初のKH-9衛星を搭載してここから行われました。また、最初のKH-11衛星も1976年12月19日にこの施設から宇宙へと送り出されています。1982年11月17日までに、合計22機のタイタンIIIDがSLC-4Eから打ち上げられました。

その後、施設は再び改修され、タイタン34Dの打ち上げに使用されました。1983年6月20日から1988年11月6日の間に7機が打ち上げられましたが、この時期にアメリカの宇宙開発史上最も劇的な事故の一つが発生しています。1986年4月18日、KH-9写真偵察衛星を搭載したタイタン34Dの9号機が、発射台からわずか数百フィートの高度で爆発炎上しました。この大規模な爆発により、施設は破片と有毒な燃料で覆われ、甚大な被害を受けました。しかし、事故発生からわずか16ヶ月という驚異的な速さで発射台は復旧し、その後のKH-11衛星打ち上げを成功させています。

この施設で最後に打ち上げられたタイタン派生型はタイタンIVです。1991年3月8日のラクロス2衛星の打ち上げから始まり、2005年10月19日の改良型クリスタル衛星を搭載したタイタンIVBの打ち上げが、SLC-4Eからの最後のタイタンミッションとなりました。合計68回の打ち上げに利用された後、この施設は長きにわたる現役の期間に終止符を打ちました。

SLC-4Wの歴史と特筆すべきミッション

SLC-4W（旧PALC-2-3）は、SLC-4Eよりもわずかに早く、1963年に発射施設4Wとして運用を開始しました。この施設もまた、2003年まで多様なロケットの発射サイトとして活躍しました。

最初の打ち上げは1963年7月12日、アトラスLV-3アジェナ-Dを用いて最初のKH-7ガンビット偵察衛星を軌道に乗せたミッションです。PALC-2-3としては、1965年3月12日までに12機のアトラス・アジェナが打ち上げられました。

その後、タイタン打上施設としてSLC-4Wに再建され、1966年7月29日に初めてのタイタンロケット、タイタンIIIBを打ち上げました。SLC-4Wからは合計68機のタイタンIIIBが打ち上げられ、最後のミッションは1987年2月12日に実施されました。

タイタンIIIBの退役後は、タイタン23Gの打ち上げに用いられました。1988年9月5日から2003年10月18日までの間に、タイタンIIを23G軌道構成で12回打ち上げています。タイタン23Gの退役とともにSLC-4Wも発射施設としての役割を終えました。合計93機のロケットがこの施設から宇宙へと旅立っています。

特筆すべきは、1994年1月25日にタイタン23Gで打ち上げられたクレメンタイン宇宙船です。これはヴァンデンバーグ基地から打ち上げられた唯一の月探査機であり、SLC-4Wの歴史に名を刻むミッションとなりました。

現代への転換：スペースXの時代

長年政府機関のロケットを打ち上げてきたSLC-4ですが、2011年からは民間宇宙企業スペースXにリースされ、新たな歴史を刻み始めました。

SLC-4E：ファルコン9の発射場として

スペースXは、SLC-4Eをファルコン9ロケットの打ち上げに適合させるため、2011年初頭から約24ヶ月にわたる大規模な改修工事を行いました。環境アセスメントを経て、旧施設の固定式および移動式整備塔などが解体され、ファルコン9の運用に必要な設備が新たに構築されました。改修後のSLC-4Eからの最初のファルコン9打ち上げは、2013年9月29日に成功裏に行われました。

SLC-4W：着陸地点LZ-4への変貌

一方、SLC-4Wは、その用途を打ち上げから「着陸」へと劇的に転換しました。スペースXは、再利用可能なファルコン9ロケットの第1段ブースターを発射場近傍に垂直着陸させる、VTVL発射場帰還（RTLS）ミッションのためにこの場所を選び、2015年2月に5年間のリース契約を結びました。着陸パッドとしての開発が始まると、旧施設の主要構造物が解体され、2017年頃には着陸用のパッドが完成しました。

当初、この斬新な用途は宇宙関係者の注目を集め、2014年にはスペースXがSLC-4Wを着陸施設として検討していることが報じられました。建設が進むにつれて、スペースXはこの場所を「第4着陸地点（Landing Zone 4、通称LZ-4）」と名付けました。一般には、連邦通信委員会（FCC）への通信許可申請や、着陸に伴うソニックブームに関する住民への警告などから、LZ-4という名称とその役割が広く知られるようになりました。

LZ-4での初めての本格的な着陸運用は、2018年10月8日に行われました。アルゼンチンのSAOCOM 1A衛星をSLC-4Eから打ち上げたファルコン9ロケットの第1段ブースターが、計画通りLZ-4へ帰還し、見事に垂直着陸を成功させたのです。これはヴァンデンバーグ基地における再利用ロケット回収の歴史的な瞬間となりました。

現代宇宙輸送の拠点

このように、ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の第4発射施設（SLC-4）は、半世紀以上にわたり軍事および科学衛星の打ち上げを担う戦略的な場所であり続けました。そして現在、スペースXによって打ち上げと同時にロケットの回収も行うという、宇宙輸送のコスト削減と効率化を目指す再利用技術の重要な実証および運用拠点として、その役割を継続しています。SLC-4は、過去の遺産を受け継ぎつつ、宇宙開発の新たな時代を象徴する場所として、今後もその重要性を増していくでしょう。

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