ヴァーハナ

ヴァーハナ - 神々の乗り物

ヴァーハナ（サンスクリット: वाहक）は、ヒンドゥー教の神々の乗り物として表現される動物や架空の存在を指します。ヴァーハナは神々によって乗られ、神々の性質や特性を象徴する重要な役割を果たします。伝統的な宗教美術の中で、神とヴァーハナの関係は数多く描かれており、神はしばしばヴァーハナに跨っている姿で描かれています。さらに、鞍や輿を載せたり、神のそばに象徴的に表現されたりすることもあります。このように、ヴァーハナは単なる乗り物ではなく、神の一部として機能します。

象徴的意義

ヒンドゥー教の宗教美術において、ヴァーハナはその主神の特性を象徴的に表現しています。たとえば、シヴァのヴァーハナである牛・ナンディンは、その力強さや男らしさを表現し、孔雀のパルヴァニはスカンダの威厳を示します。また、サラスヴァティーのハムサ（Hamsa）は知恵を象徴しています。これとは対照的に、神々が支配する悪徳を象徴する場合もあり、スカンダは自惚れを象徴する孔雀に乗り、その悪徳を制御しています。ガネーシャはねずみのムシカに乗り、雑念を追い払う役割を果たします。資産を守る神シャニ（Shani）は、ハゲタカ（又はカラス）の持つ盗癖を抑え、ヴァーハナを吉兆に変える力を持つとされています。

伝承の中に見る由来

ヴァーハナの性質や姿はさまざまな物語や地域によって異なります。以下にいくつかのエピソードを紹介します。

1. ガネーシャの友達とムシカの伝説
ガネーシャが幼少期、巨大なねずみが友達を怖がらせる事件がありました。ガネーシャはそのねずみを捕まえ、ヴァーハナとして使うことになりました。このねずみは元々神々の楽器演奏者であるガンダルヴァだったとされ、呪いによって姿を変えられたという伝説があります。

2. ナンディンの変化
ナンディンはもともと喜びや音楽を司る神でしたが、時代と共にシヴァの乗り物として知られるようになりました。この過程で牛の姿へと変わり、現在のナンディンとして存在するようになりました。

3. スカンダと孔雀
スカンダは南インドの神・ムルガンに関連して孔雀に乗っています。孔雀はもと悪魔であったスラパドマが変貌したもので、戦いの中でスカンダが孔雀をヴァーハナとして使うエピソードがあります。スカンダが敵を祈りによって友に変える姿が描かれており、神々と悪を相互に結びつけています。

ヴァーハナの一覧

ヴァーハナと神々の関係は一貫性が無いこともあります。たとえば、ガネーシャが孔雀に乗っている描写も見られますが、孔雀は通常スカンダのヴァーハナとされています。また、稀にガネーシャが象やライオン、さらには多頭の蛇に乗っている姿も描かれています。

ヴァーハナは神の副手として、その神の力を強化させる役割を担っています。女神ドゥルガーはライオンのヴァーハナなしでは悪魔を討つことができず、また女神ラクシュミーのフクロウであるウルカは豊かさをもたらします。ガネーシャは障害を取り除く神として知られる一方、その力は時にその巨大な体によって制約されるため、別の存在であるムシカがその役割を補うことにもなります。

このように、ヴァーハナはヒンドゥー教の神々と深く結びついており、それぞれの神やその特質を理解する上で欠かせない存在です。

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