ヴィクラマーディティヤ (ウッジャイン王)

ヴィクラマーディティヤの伝説と影響

ヴィクラマーディティヤは、古代インドの伝説的な王として知られています。彼はウッジャインを都とし、インド全域を支配した人物とされています。伝説によれば、彼はサカと呼ばれる反乱軍を撃退し、ヴィクラマ紀元（紀元前58年）を創始したとされています。また文芸や学問の振興に大きな影響を与えたとされ、さまざまなエピソードが語られています。

伝説の形成

ヴィクラマーディティヤに関する記録は、プラーナ文献にはまだ現れておらず、最も古い記録は6世紀の仏教文献に見られます。仏教の文献では、彼が学者たちとの論争に関与し、仏教を教えたとするエピソードがあります。特に、世親やその弟子ブッダミトラとの関連が語られ、ヴィクラマーディティヤが教えを広めたと伝えられています。

さらに、後の文献には彼が芸術や学問を擁護したことが記されています。特に、11世紀に成立した『カター・サリット・サーガラ』やその他の伝説的な説話集には、ヴィクラマーディティヤの名がしばしば登場し、彼を主人公とした物語が展開されます。また、彼とシャーリヴァーハナという王との対立が語られ、この二人の文化的、軍事的な抗争は、後の文学において重要なテーマとなりました。

宮廷と学者たち

ヴィクラマーディティヤの宮廷は、一流の学者や詩人が集まる場所であり、特に「九宝」と呼ばれる9人の傑出した人物たちが重用されていました。詩人のカーリダーサや天文学者のヴァラーハミヒラ、文法学者のヴァラルチなど、彼らの業績は後のインド文学や科学に大きな影響を与えました。カーリダーサに関しては、彼がヴィクラマーディティヤの宮廷で活躍していたことが後の文献に記述されています。

歴史的背景と疑問

ヴィクラマ紀元は紀元前58年に始まると言われていますが、この年代は後の碑文から呼ばれるものであり、実際にヴィクラマーディティヤと結びつける必要性は見当たりません。そのため、彼がサカを打ち破ったというストーリーも伝説として扱われることが多いのです。ヴィクラマーディティヤを称した王々は他にも存在し、特にグプタ朝の王たちによって彼の名は継承されています。

影響と後世の評価

チャールキヤ朝の王々の中には、ヴィクラマーディティヤの名を称した者も多く存在し、その影響力は今なお色濃く残っています。特に後期のチャールキヤ王ヴィクラマーディティヤ6世は、自らの年代を「チャールキヤ・ヴィクラマ紀元」と名付け、この伝説的な王の名声を引き継ぎました。また、近世にはデリーを制圧したヘームーが彼を名乗り、後にアクバルがナヴァラトナを設けた際にもヴィクラマーディティヤの名が重用されました。

最近では、インド海軍の航空母艦「アドミラル・ゴルシコフ」が「ヴィクラマーディティヤ」と改名されるなど、現代においても彼の名は重要な文化的象徴として扱われています。こうしたヴィクラマーディティヤの伝説とその周囲のエピソードは、インドの文化と歴史に深い影響を与えていることは間違いありません。

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