ヴィクラマーディティヤ (空母)

ヴィクラマーディティヤについて

ヴィクラマーディティヤ（INS Vikramāditya）は、インド海軍に属する航空母艦で、ロシア海軍から購入した「アドミラル・ゴルシコフ」を基に改装されています。この艦艇は、短距離離陸拘束着艦（STOBAR）システムを使用することで知られ、特にインド洋地域での海上航空戦力の強化を目的としています。艦名は、インドの神話と歴史に登場する伝説の皇子に由来し、インドの海軍力の象徴でもあります。

再就役に至った経緯

インド海軍は1961年に初の空母「ヴィクラント」を取得し、以降、空母による洋上航空運用能力を強化してきました。1971年の第三次印パ戦争では、空母の活躍によって航空優位を確立し、後の「ヴィラート」の取得に繋がり、空母を二隻運用する体制が整いました。しかし、老朽化したヴィクラントが1990年代に退役予定となる中、新たな空母の必要性が高まりました。

1989年、インドはフランスのDCN社と協力して新型空母の建設を始める計画を立てましたが、ソ連の崩壊や経済危機により計画が中止。また、1997年にはヴィクラントが退役し、2012年にはヴィラートも退役が予定されていたことから、短期的な対策としてロシアに接触することを決定しました。

インドへの売却と改装の過程

元々、ヴィクラマーディティヤはソビエト連邦海軍向けに建造された重航空巡洋艦で、1980年代に竣工。1991年のソ連崩壊後、運用が停滞し、最終的にインドに売却される運びとなりました。1994年より売却交渉が始まり、1998年には艦艇が無償譲渡される代わりにインド側が改装費用を負担する契約が成立。しかし、改装費用の詳細調整が難航したため、最終的に2004年には約9億7400万ドルで改装を行うことが決定しました。

改装工事は北方機械建造会社で行われ、艦名が「ヴィクラマーディティヤ」に変更されました。工事の過程では多くの課題が浮上し、コストの増加や工期の遅延が発生しましたが、最終的に2013年にインド海軍に引き渡されました。

設計と性能

ヴィクラマーディティヤは、大規模な改設計が施され、全通飛行甲板を持つ航空母艦として生まれ変わりました。改装により、従来の兵装は撤去され、アングルド・デッキとスキージャンプ勾配を新たに設置。また、推進システムも一新され、軽油対応のボイラーが導入されました。これにより、他のガスタービンエンジン艦との燃料共用も可能となりました。

航空運用機能

改装後、ヴィクラマーディティヤはCTOL機を使用するSTOBAR方式へと変更され、MiG-29Kやヘリコプターの運用が可能です。飛行甲板にはスキージャンプ勾配が設けられ、発艦・着艦の運用が効率的に行えるようになりました。また、飛行甲板の下には格納庫が設けられ、最大で34機の航空機を搭載可能です。

各種防御機能

改装前に搭載していた強力な兵装の多くは撤去されましたが、艦対空ミサイルシステム「バラク-1」が装備されています。なお、バラク-8の装備も計画されており、将来的な性能向上が期待されています。

運用と展望

2017年には日米印合同軍事演習「マラバール2017」に参加し、国際的な協力も行っています。インド海軍は、急速に近代化が進む国産空母計画と併せて、ヴィクラマーディティヤを長期的な海上戦力として活用する意向を示しています。今後の運用には、インド海軍との40年契約に基づく継続的な整備も含まれています。これにより、インド海軍は海洋戦略をさらに進化させるとともに、地域の安全保障に向けて重要な役割を果たすこととなるでしょう。

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