ヴィタ・サックヴィル＝ウェスト

ヴィタ・サックヴィル＝ウェスト：詩人、作家、そして庭園デザイナー

ヴィタ・サックヴィル＝ウェスト（1892年-1962年）は、20世紀イギリスを代表する詩人、作家として知られています。貴族サックヴィル家の生まれである彼女は、特異な美貌と才能、そして奔放な恋愛遍歴で知られ、多くの芸術家や文人たちと交流しました。生涯を通じて、詩作、小説創作、そして庭づくりに情熱を傾け、その活動は今日でも高い評価を受けています。

華麗なる生い立ちと複雑な恋愛

ケント州の裕福な貴族の家に生まれたヴィタは、幼少期から並外れた才能を示しました。本名はヴィクトリアですが、生涯ヴィタの名前で親しまれました。中性的な容姿と知的な魅力を持つ彼女は、1913年、外交官であるハロルド・ニコルソンと結婚。しかし、彼らの結婚生活は、現代的なオープンな関係を特徴としていました。ヴィタは女性との恋愛経験を持ち、両性愛者としての側面を持っていました。ハロルドもまた、男性との恋愛関係を持っていたと言われています。

ヴィタの生涯における重要な恋愛関係の一つは、ヴァイオレット・ケッペル＝トレフューシスとの関係です。10代の頃から親密な関係にあった2人は、結婚後も密かに関係を続け、一度はフランスへ駆け落ちするほどの深いつながりを持っていました。しかし、ヴィタがハロルドとの関係を完全に断ち切ることを拒んだこと、そしてヴァイオレットの複雑な感情が原因で、2人の関係は終焉を迎えます。ヴィタの小説『Challenge』はこの経験を基に書かれたと考えられています。

ヴァージニア・ウルフとの運命的な出会い

1920年代後半、ヴィタはヴァージニア・ウルフと出会います。2人の間には激しい恋愛が芽生え、その関係は、ウルフの代表作である『オーランドー』の創作に大きな影響を与えました。この小説は、ヴィタとサックヴィル家の歴史をモデルに書かれ、ヴィタの人生と彼女を取り巻く世界を反映しています。息子のナイジェルは、この作品を「文学における最も長く魅力的な恋文」と評しています。しかし、ヴィタの他の恋人への関心の移り変わりと共に、2人の関係は終わりを迎えます。

庭園デザインへの情熱と晩年

ハロルドとの関係は、複雑ながらも生涯を通じて続いていました。第二次世界大戦中も、離れていても文通を欠かさず、イギリスに戻れば共に生活を送っていました。1930年代には、ケント州シシングハースト・カースルに移り住み、ヴィタは庭園造りに没頭します。彼女のデザインした庭園は、シシングハースト・カースル・ガーデンとして一般公開され、現在もナショナル・トラストによって管理されています。

戦後、ヴィタは文学への貢献によりコンパニオン・オブ・オナー勲章を受章し、『オブザーバー』紙でガーデニングに関するコラムを連載するなど、多方面で活躍しました。晩年もハロルドと共に過ごしたヴィタは、1962年に亡くなりましたが、彼女の詩、小説、そして美しい庭園は、人々に深い感動を与え続け、現在でも多くのファンを魅了し続けています。彼女の功績を称え、ロンドンの邸宅にはブルー・プラークが設置されています。現在、庭園は孫であるアダムとその妻サラによって管理されています。

作品リスト

The Land (1927) 詩
Challenge (1923) 小説
* The Edwardians (1930) 小説

そして、日本語訳された作品も数多く存在します。彼女の作品は、その時代背景や、彼女自身の複雑な人生経験を反映した、奥深い内容となっています。

ヴィタ・サックヴィル＝ウェスト