ヴィッカース・クロスレイ装甲車

ヴィッカース・クロスレイ装甲車の概要と日本での活用

ヴィッカース・クロスレイ装甲車（Vickers-Crossley Armoured Car）は、イギリスに本社を持つヴィッカース社の傘下、クロスレイ社によって開発された戦車の一種です。この装輪装甲車は、特に数種類のバリエーションが存在し、なかでも1925年型のM25が日本で特に知られています。このM25は、大日本帝国海軍によって輸入され、海軍陸戦隊などで幅広く使用されました。

起源と設計

この装甲車は、第一次世界大戦中にイギリス海軍が飛行場の警備用として開発した装輪車両を基にしています。戦争終結後、イギリス海軍は装甲車両の保有をやめ、陸軍も軽戦車への移行が進んでいきました。しかし、殖民地警備の必要性が依然として残っていたため、クロスレイ社は装輪装甲車の生産を続けました。

M25は1925年に登場しましたが、その設計は1923年製のM23型を基にした小改良版です。車体は5.5mm厚の装甲で保護されており、エンジンは車体前部に、特徴的な半球形の旋回銃塔が車体上部に設けられています。この銃塔には、通常前方に二丁、後方にも二丁のヴィッカース重機関銃Mk.Iが取り付けられる設計ですが、実際には前方の二丁だけが使用されることが多かったです。この装甲車は、最高速度が64km/hに達し、高速の提供も実現していました。

特に、イギリス帝国内の植民地部隊に広く配備され、「インド仕様」としても知られる存在となりました。

日本での利用

日本陸軍による採用

日本では、陸軍が1927年に支那駐屯軍向けに三輌のヴィッカース・クロスレイ装甲車の購入を決定しました。翌1928年には二輌が天津の歩兵隊へ配備され、もう一輌は関東軍に提供されました。特に、満州事変の際には、これらの装甲車が警備や追撃戦で使用され、市街での暴動鎮圧にも貢献しました。

日本海軍の導入

一方で、日本海軍も上海における警備任務のために装甲車を導入しました。1920年代後半には、海軍の陸戦隊用として小型の装甲車が配備され、これにより部隊の防御力が強化されました。当時の情勢が緊迫する中、1932年1月には、上海での第一次上海事変において本車が積極的に使用され、その機動性と戦闘力が期待されました。。

この時点で七輌以上が配置され、重要な防衛手段として利用されました。舗装された市街地での行動は得意でしたが、5.5mmの装甲は脆弱性もあり、中国軍による攻撃にさらされることもありました。しかしながら、これらの装甲車の存在は、数少ない陸戦隊で大きな敵勢力を相手に戦う際に大いに貢献しました。

戦後の影響

このような実績を踏まえ、日本海軍は新型の装輪装甲車導入に舵を切る契機となり、装輪式の九三式装甲自動車などが採用されることにつながります。

本車は、1937年の第二次上海事変でも活躍し、その後も中国方面での警備任務に使用され続けました。太平洋戦争の終息時には、依然として上海の日海軍特別陸戦隊に一輌が配備されていました。

このように、ヴィッカース・クロスレイ装甲車は装甲車両の運用における新たな可能性を開く存在となったのです。

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