九三式装甲自動車

九三式装甲自動車

九三式装甲自動車（93しきそうこうじどうしゃ）は、大日本帝国海軍向けに1933年に採用された装輪装甲車です。この車両は、特に欧米の文献において誤って「九二式重装甲車」と識別されることが多く、混乱を招いています。また、献納兵器として製造された「報国2号」や「報国3号」という車両の写真が広く知られているため、時には総称して「報国号装甲車」と呼ばれることもあります。ただし、海軍向けに製作された装輪装甲車は九三式だけではなく、別の形である「報国1号」なども存在します。さらに、一部の研究者は「クロスレイ6輪装甲車」として解説する場合もあります。

この装甲自動車は、石川島自動車製造所により開発され、日本海軍の委託を受けた形で誕生しました。車体は6輪式で、推測によれば、スミダ九三式六輪乗用車の試作車をベースにしていると考えられていますが、左ハンドル設計からすると輸入車両の可能性も示唆されています。また、外装の装甲形状は伝統的な国産の装輪装甲車とは異なり、特にフェンダーや砲塔に直線が多用されていて、角ばったデザインが特徴です。タイヤは従来の海軍装輪装甲車とは異なり、チューブ式エアタイヤを採用しており、前輪の後方には障害物を超越するための補助輪が装着されています。

武装面では、砲塔にヴィッカース重機関銃1丁を備えており、助手席の正面と車体側面にはそれぞれボールマウント式の銃架が1か所ずつ確保されています。また、砲塔の上部には対空銃架も装備されており、ここには十一年式軽機関銃を装着可能です。この設計には第一次上海事変で得られた戦訓が反映されており、対空銃架の目的は航空機の迎撃よりも市街戦における高層建築物への攻撃に重点が置かれています。

九三式装甲自動車の生産数は非常に少なく、3輌から5輌程度とされています。主に上海海軍特別陸戦隊に配備され、特に第二次上海事変では著しい戦果を挙げました。その後、この装甲自動車は中国方面での警備任務に用いられ、太平洋戦争の終結時点でさえも3輌が上海海軍特別陸戦隊に配備されていました。こうした背景から、九三式装甲自動車は当時の海軍にとって重要な戦力の一部であったことがわかります。

もう一度検索