ヴィットーレ・カルパッチョ

ヴィットーレ・カルパッチョ（Vittore Carpaccio, 1465年頃 - 1525年頃）は、ヴェネツィア派を代表する画家であり、ジェンティーレ・ベリーニに師事しました。彼は風景描写に優れており、特に『聖ウルスラ物語』として知られる9枚の絵画からなる連作でその名を知られています。

生涯

カルパッチョの生涯には不明な点が多く、正確な生年月日も分かっていません。しかし、彼の主要な作品が1490年から1519年の間に制作されたことは確かです。また、彼は初期ヴェネツィア派の重要な画家の一人であることは間違いありません。

彼の誕生年については諸説ありますが、おじであるフラ・イラリオの遺言書で1472年に言及されているのが、最も初期の記録です。この記述から、15歳未満では遺産相続人になれないという当時の法律を根拠に、1455年頃の生まれと推定されることがあります。しかし、この推定には、おじがカルパッチョが将来的に相続資格を得ることを前提に遺言を作成した可能性を考慮する必要があるでしょう。

また、初期の作品である1490年制作の『聖ウルスラ』連作には、若さゆえの未熟さが見られます。このことから、1490年時点でカルパッチョが35歳という成熟した年齢に達していたとは考えにくく、1490年頃には25歳程度だったと推測されています。

カルパッチョは、ジョヴァンニ・ベリーニやアントニオ・ヴィヴァリーニと同じく、ヴェネツィアの大工房の親方であるラッザロ・バスティアーニの弟子でした。バスティアーニの作品は、ウィーンにある『S・ヴェネランダ』、ロンドンのナショナル・ギャラリーにある『聖処女の前跪くDoge Mocenigo』や『聖母子』などで見ることができます。後年、カルパッチョはジョヴァンニ・バッティスタ・チーマ・ダ・コネリアーノの影響を受けたと考えられています。

『聖ウルスラ』連作以外にも、『童貞マリアの生涯』や『聖ステパノスの生涯』、ベルリンにある『死せるキリスト』などの連作が知られています。

その他、マドリードのティッセン＝ボルネミッサ美術館にある1510年の『若い騎士の肖像』、ニューヨークのメトロポリタン美術館にある1510年頃の『キリストの受難の瞑想』、ヴェネツィアのアカデミア美術館にある1515年の『アララット山の1万人の殉教者』、ベオグラードのセルビア国立美術館にある『聖セバスティアヌス』や『聖なる巡礼者』などが彼の作品として挙げられます。

作品の詳細

詳細な情報については、ポンペオ・モルメンティとグスターフ・ルードヴィッヒの共著『ヴィットーレ・カルパッチョの生涯と作品』（1907年）や、ロジャー・フライによる評論「ジャンル画家とその批評」（1908年）が参考になります。

代表作としては、当時信仰を集めていた聖ウルスラを主題とした9枚の連作『聖ウルスラの夢』（1495年）や、1515年の『騎士の帰還』が有名です。

その他

カルパッチョの名前は、生牛肉にパルミジャーノ・レッジャーノやソースをかけた料理「カルパッチョ」の由来にもなっています。この料理の名前は、カルパッチョの絵画の赤色を基調とした色彩と、生牛肉の赤身の色が似ていることから名付けられたと言われています。カルパッチョ自身がこの料理を好んだという説もあります。

画集解説

カルパッチョについてより深く知りたい場合は、『カルパッチョ イタリア・ルネサンスの巨匠たち23 ヴェネツィアの画家』（東京書籍、1995年）も参考になります。

脚注

生没年、作品制作年については、情報源によって異なる場合があります。特に、『聖ウルスラ伝説』の連作については、1490年制作と1495年制作の両方の記述が見られます。

外部リンク

ヴィットーレ・カルパッチョの絵画（英語）
ウェブ・ギャラリ（英語）
ヴィットーレ・カルパッチョ（フランス語）

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