ヴェガロケット

ヴェガロケット：小型衛星の宇宙への扉

欧州宇宙機関（ESA）が開発したヴェガロケットは、低軌道への小型衛星打ち上げを専門とするロケットです。大型ロケットであるアリアン5が静止軌道への大型ペイロード投入を得意とする一方、ヴェガは300kgから2000kg程度の小型の科学衛星や地球観測衛星の低軌道投入に特化しており、経済的な打ち上げを実現しました。高度700kmの太陽同期軌道に1.5トンの衛星を打ち上げることが可能です。

開発の経緯と参加国

ヴェガの開発は、イタリア宇宙機関（ASI）が主導しました。フィアットアヴィオ社などを中心とした企業がロケット本体や推進システムの開発を担当し、フランス国立宇宙センター（CNES）など、ESA加盟国が開発に参画しました。打ち上げは、CNESが運営するギアナ宇宙センターのELA1発射場から行われています。国際協力によって実現したプロジェクトであり、イタリアが開発費用の65％を負担するなど、各国が分担比率を定めて開発を進めました。

ヴェガロケットの開発・製造は、2000年12月に設立されたELV S.p.A.によって行われ、年間4機の打ち上げを目指していました。当初は2006年の初飛行を目指していましたが、計画は大幅に遅れ、2012年2月13日に初打ち上げに成功しました。2024年9月5日のVV24をもって、従来型のヴェガの運用は終了しましたが、ヴェガCなどの改良型は運用が継続されています。

開発の歩み：構想から実現まで

ヴェガロケットの構想は1990年代初頭に遡ります。アリアンの固体ロケットブースターの技術を活用し、小型衛星打ち上げ用のロケットを開発するという構想から始まり、過去のサン・マルコ・スカウト計画の技術的知見も活かされました。

当初の計画では3段構成で、700kgのペイロードを700kmの低軌道に投入する能力を想定していました。その後、様々な改良案が検討され、複数の設計案が提案されました。アリアン5のブースター技術を取り入れ、固体ロケットモーターと液体ロケットエンジンを組み合わせた構成へと進化していきました。最終的な構成は2004年に決定しました。

ヴェガロケットの構成

ヴェガロケットは、4段構成のロケットです。

第1段：P80固体ロケットモーター: アリアン5のブースター技術を応用した強力な推進力を持つ。
第2段：Zefiro 23固体ロケットモーター: 第1段に続く固体ロケットモーター。
第3段：Zefiro 9固体ロケットモーター: 高度な軌道制御を実現する固体ロケットモーター。
第4段：AVUM (Attitude and Vernier Upper Module): UDMHとNTOを推進剤とする液体ロケットエンジン。高精度な軌道投入を実現する役割を担い、軌道投入精度99.7％を達成することを目指しています。

各段のエンジンは、地上燃焼試験を複数回実施し、信頼性を確保しています。

ヴェガの派生型：ヴェガCとヴェガE

ヴェガロケットの成功を基に、更なる性能向上を目指した派生型が開発されています。

ヴェガC: P120という新型の大型固体ロケットモーターを採用し、ペイロード能力を大幅に向上させました。アリアン6ロケットと部品を共通化することでコスト削減も実現しています。2022年7月に初打ち上げに成功しましたが、その後打ち上げ失敗に見舞われ、運用が一時中断されました。

ヴェガE: ヴェガCをベースに、第3、4段をLOX/LCH4を推進剤とする新型エンジンに換装した改良型です。より高い軌道投入能力を目指しており、2026年の初飛行が予定されています。

未来への展望

他にも、様々な改良計画が検討されてきました。第2段や第1段をより大型のエンジンに換装する案、上段エンジンを変更する案など、常に性能向上を目指した研究開発が進められてきました。

ヴェガロケットは、小型衛星打ち上げ市場において重要な役割を果たしており、科学技術の発展に大きく貢献しています。今後も、更なる進化を遂げ、宇宙開発を支える存在として期待されています。

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