ヴェプス人

ヴェプス人：ロシア北西部の少数民族とその歴史

ヴェプス人は、ロシア北西部に居住するバルト・フィン系民族です。ウラル語族バルト・フィン諸語に属するヴェプス語を母語とし、コーカソイド系の民族的特徴を持ちますが、一部にはモンゴロイド系の遺伝子も確認されています。

ヴェプス人の名称と人口

ヴェプス語には複数の方言が存在し、それぞれの地域で異なる自称が用いられています。2002年のロシア国勢調査では、ロシア国内に約8240人のヴェプス人が確認されました。ウクライナにも約280人のヴェプス人が居住していますが、ヴェプス語を話す人はごく少数です。

ヴェプス人の居住地

ヴェプス人の居住地は、ラドガ湖、オネガ湖、ベロエ湖周辺に集中しています。ロシアのカレリア共和国、レニングラード州などに居住しており、歴史的にヴェプス人が多く住む地域として知られています。

ヴェプス人の歴史：古代から現代まで

先史時代

考古学や言語学の研究によると、ヴェプス人の祖先はシェクスナ川、スダ川、シャシ川の流域に居住していました。彼らはオネガ湖周辺にまで勢力を拡大し、東カレリアやオネガ湖北岸にも居住していたと考えられています。6世紀のゴート人歴史家ヨルダネスの記述の中にヴェプス人に相当する集団への言及があり、ヴァイキング時代の記録にもヴェプス人に関する情報が含まれている可能性があります。

歴史時代

初期のロシア年代記やアラビア語文献には、ヴェプス人に関連する記述が登場します。これらは、ヴェプス人が歴史的に重要な役割を果たしていたことを示しています。12世紀以降は、ノヴゴロド公国、後にモスクワ公国との関係を深めていきました。14～15世紀にはロシア人の入植が本格化し、東部ヴェプス人の多くはロシア語への同化が進みました。

1897年の国勢調査では、ヴェプス人人口は約2万5千人と記録されています。20世紀初頭には、ヴェプス人の民族意識の高まりを受け、ソビエト政府はヴェプス文化の支援政策を展開しました。しかし、1937年からは政策転換が起こり、ヴェプス文化は弾圧されることになります。第二次世界大戦中には、フィンランドに協力したヴェプス人もいました。戦後は多くのヴェプス人が農村から都市部へ移住し、民族意識の低下もみられました。

1980年代以降、ヴェプス語の教材開発や新聞の発行などが行われ、ヴェプス文化の復興が試みられました。1990年代には、ヴェプス人の自治体も設立されましたが、2006年に廃止されました。現在では、若い世代のヴェプス語話者は減少しており、言語維持が大きな課題となっています。

ヴェプス人の文化と現状

ヴェプス人の文化は、長年にわたる歴史と環境の中で育まれてきました。しかし、ソ連時代の政策や社会経済の変化などによって、ヴェプス文化は大きな影響を受けてきました。現在、ヴェプス語の衰退や民族意識の低下が大きな課題となっています。しかし、ヴェプス語を維持・発展させようとする動きや、文化復興を目的とした活動も継続されており、ヴェプス人の未来は依然として不確実なままです。言語の維持、文化の継承、そして民族としてのアイデンティティの確立は、ヴェプス人が直面する重要な課題であり、今後の動向が注目されます。

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