ヴェレス

ヴェレス：歴史、文化、そしてフェイクニュースの交差点

ヴェレスは、北マケドニア共和国の中央部に位置する都市であり、同名の基礎自治体の中心地です。ヴァルダル川のほとりに開けたこの町は、豊かな歴史と文化、そして近年では「フェイクニュースのハブ」としての側面も持ち合わせています。

スラヴ神話の神を冠する町

ヴェレスという名前は、スラヴ神話に登場する神「ヴェレス」に由来します。かつてユーゴスラビア時代には、ヨシップ・ブロズ・チトーにちなんで「ティトフ・ヴェレス」と呼ばれていましたが、マケドニア共和国の独立に伴い、元の名前に戻されました。自動車のナンバープレートも「TV」から「VE」へと変更されています。

古代からの歴史

ヴェレスの地には、1000年以上前から人が居住していました。古代には「ヴィラゾラ」と呼ばれ、パイオニア王国の支配下で、トラキア人やイリュリア人が暮らしていたと考えられています。オスマン帝国時代には「キョプリュリュ」という名で知られ、コソボ州の一部でした。

文化と工業の町

ヴェレスは、文学、文化、歴史、伝統が息づく町であり、多くの文化的遺産や古い聖堂が残されています。ユーゴスラビア時代には工業の中心地として栄えましたが、解体後は徐々に衰退していきました。

フェイクニュースの震源地？

近年、ヴェレスは情報技術産業の中心地としての一面も持つ一方で、失業率の高まりから、アフィリエイトやニュース転載サイト、医療情報まとめサイト運営などに手を染める若者が増えています。2016年には、『ガーディアン』や『バズフィード』の調査により、ヴェレスから米国の保守派向けの親トランプ的なフェイクニュースが発信されていることが判明し、「フェイクニュースの工場」「フェイクニュースのハブ」と呼ばれるようになりました。

写真集とAIの罠

ノルウェーの写真家ヨナス・ベンディクセンは、ヴェレスのフェイクニュース産業をテーマにした写真集『The Book of Veles』を2021年に発表しました。しかし、その写真に登場する人物や動物の多くは実在せず、解説文もAIによって生成されたものでした。この事実は、ベンディクセン自身が明かすまで、多くの人々に見破られることはありませんでした。

多様な民族が暮らす町

2002年の国勢調査によると、ヴェレス基礎自治体の人口は55,340人です。その内訳は、マケドニア人が84.86%と最も多く、次いでボシュニャク人、アルバニア人、トルコ人、ロマなどが暮らしています。

姉妹都市

ヴェレスは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

スロボジア（ルーマニア）
プーラ（クロアチア） - 友好提携都市

ヴェレスは、古代からの歴史と文化が色濃く残る一方で、現代社会の課題であるフェイクニュース問題の震源地としても注目される、複雑な表情を持つ町です。

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