ヴォーリャ (戦艦)

戦艦ヴォーリャの歴史

戦艦ヴォーリャ（ウクライナ語：Воля）は、ロシア帝国で建造されたインペラトリッツァ・マリーヤ級の戦艦であり、その名は「自由」や「意思」を意味します。この艦は黒海艦隊で重要な役割を果たし、一時的に艦隊旗艦に指定されたこともある艦船です。

発注と建造

ヴォーリャは、日露戦争後のロシア海軍の強化政策に則り建造された艦で、インペラトリッツァ・マリーヤ級戦艦の3番艦です。艦の当初の名前は「皇帝アレクサンドル3世」でしたが、1917年に「ヴォーリャ」という名前に改称されました。これには、帝政的な色彩を避ける意図が込められていました。

工場での建造は1911年に始まりましたが、第一次世界大戦の勃発や続くロシア革命により、完成は遅れました。実際に進水したのは1914年で、1917年に艦の竣工が完了しました。

艤装と性能

艦の主武装は305 mmの3連装砲で、艦体に4基の砲塔を等間隔に配置していました。また、副砲として130 mm砲22基と76.2 mm高角砲を装備し、水中用魚雷発射管も搭載していました。通信装備には、海軍省製の無線機が搭載され、最大700海里の距離で通信可能でした。

機関は4基のタービン機関を有しており、合計28,957馬力を発揮し、高速の巡航が可能でした。装甲の最大厚は267 mmで、一定の防御力を持ちながらも、後に現れたオスマン帝国の巡洋戦艦の砲撃に対しては脆弱でした。

黒海艦隊の一員としての活動

1917年、ヴォーリャは黒海艦隊の第2機動艦隊に編入され、最初の実戦任務としてアナトリア半島沿岸を巡回しました。この時期、ロシアの政治情勢は不安定で、艦隊も様々な影響を受けました。

特に十月革命以降、赤軍に対する警戒艦としての役割を担い、オスマン帝国海軍の軽巡洋艦ミディッリとの交戦にも参加しましたが、その結果は芳しくありませんでした。

ウクライナ革命の影響

ウクライナに赤軍が侵攻し、ヴォーリャは赤色黒海艦隊に編入されました。ウクライナ人民の意向を反映し、「ウクライナ人民共和国艦隊」の一部として扱われました。国際情勢が急速に変化する中、艦隊はウクライナ国旗を掲げ、ドイツとの交渉も行いました。しかし、複雑な政治状況の中で緊張が高まります。

最終的に、ヴォーリャはセヴァストーポリを経て、黒海艦隊から独立した存在として扱われることになりました。艦の帰還や譲渡に関する議論が続く中、艦は反赤軍作戦に従事し、白軍にも参加しました。

後の運命

1919年、ヴォーリャは連合軍から白軍に引き渡され、改名されました。白軍時代の中で、黒海での戦闘や返還の試みが継続されましたが、その後の国際情勢の変化に伴い、艦の運命も再び変わっていきます。植民地の喪失とともに、フランス政府に接収され、艦の状態は悪化し続けました。

最終的に、1940年にはフィンランドに運ばれ、その一部の武装が沿岸砲として使用されましたが、艦そのものは解体され、歴史の中でその姿を消しました。

謎に包まれた艦船

戦艦ヴォーリャの物語は、激動の時代をともにした艦船の象徴といえます。多くの歴史的な出来事が交錯し、単なる軍艦としてだけではなく、当時の政治や国際関係を映し出す存在となったのです。この艦は、自由を求めるウクライナの精神そのものを体現しています。

もう一度検索