一〇式繋留気球

一〇式繋留気球

概要

一〇式繋留気球とは、かつて大日本帝国海軍によって使用された有人気球です。この気球は軽巡洋艦や戦艦、潜水母艦などの大型艦艇に搭載され、主に射撃観測、対潜哨戒、魚雷監視、偵察・捜索などの目的で運用されていました。いわば、艦艇からの情報収集や監視活動を支援する重要な役割を担っていました。

この気球は1917年または1918年にイギリスから輸入されたM型繋留気球を原型としています。この輸入品は巡洋戦艦「金剛」での試用において優れた性能を示したため、国産化が急務とされ、改良が施された後、1920年に製造が開始されました。初期の製造数は6基であり、呼称も改良M型繋留気球から「一号型繋留気球」に改称されました。

1927年には正式に「一〇式繋留気球」として兵器として採用され、連合艦隊や横須賀海軍航空隊に配備され、実戦に向けた訓練や研究が行われました。1929年までには71基が生産されたとされますが、その後の航空機の発展により、1930年代初頭には海軍の気球隊が解体され、残存していた気球も最終的には軍需部に返還されました。気球に関する研究の一環として、いくつかの気球は落下傘の研究用として藤倉工業に払い下げられたこともありました。

構造と機能

一〇式繋留気球は、その設計において重要な特徴をいくつか持っています。気嚢は流線型の形状をしており、高速曳航に適していました。利用されるガスは水素で、繋留には鋼索が使用され、その心線には電話線が利用されています。大きな危険要因の一つである雷雨に対処するために、気球には放電装置が備えられており、万が一の雷によるガス爆発を防ぐ工夫がなされています。さらに、1925年以降に生産された機体には電気的な安全性を高める改修が施されていました。

また、非常時の脱出用にスペンサー型落下傘が配備されており、万が一の遭遇時にも乗員が安全に脱出する手段が講じられていました。

主な諸元

• - 全長: 25.00 m
• - 全幅: 12.40 m
• - 最大直径: 8.14 m
• - 気嚢全高: 17.40 m
• - 気嚢全容積: 940 m³
• - 重量: 535 kg
• - 昇騰高度: 550 m
• - 繋留索全長: 1,000 m

このように、一〇式繋留気球は多くの航空技術の先駆けとして、当時の日本海軍の任務を支える貴重な資源でありました。その歴史や技術は、今なお多くの航空ファンや研究者にとって興味深いテーマとされています。

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