一世 (日系人)

一世（いっせい）とは

一世とは、主に北米、南米、オーストラリアなどへ最初に移住した日本人（日系人）を指す言葉です。移住先で生まれた一世の子どもたちは「二世」、孫たちは「三世」と呼ばれ、世代ごとに異なる文化や価値観を形成してきました。

各国への移民

日本人の組織的な移民は1897年のメキシコへの「榎本移民」が最初とされていますが、特に多くの日系人が居住しているのはブラジル、アメリカ合衆国、カナダ、ペルーです。

ブラジル

ブラジルには、日系人以外との結婚で生まれた人々も含めると約150万人の日系人が居住しており、世界で最も多い日系人口を誇ります。彼らの多くは、ブラジル社会で重要な地位を占めるようになっています。

アメリカ

アメリカへの最初の移民は、本土ではなくハワイ王国を目指しました。1885年、ハワイのサトウキビやパイナップル農園での労働を求めて、多くの日本人が渡航しました。その後、アメリカ本土への移住が始まり、初期の移民は知識や技術を習得するために渡航しました。

しかし、第二次世界大戦中には敵性外国人として強制収容所に収容されるなど、厳しい状況も経験しました。1952年に「修正移民法」が成立し、ようやく帰化が認められました。

カナダ

カナダにも多くの一世が移住し、日系人コミュニティを形成しましたが、アメリカと同様に強制収容を経験しました。

ペルー

ペルーもまた、多くの一世が移住した国の一つです。日系人コミュニティは、ペルー社会において独自の文化を築いてきました。

文化

日系人コミュニティでは、世代を表すために「一世」「二世」「三世」といった用語が用いられます。これらの世代は、権利、性、日本への帰属意識、宗教観などにおいて異なる特徴を示します。

一世は、移住先の言語を十分に習得しない傾向があり、日本語のメディアに依存することが多かったため、自身を日本人と認識する傾向がありました。

1988年にアメリカで「市民の自由法」が制定されて以降、日系人社会では自身のアイデンティティや、非日系人への適応のあり方について、大きな変化が見られるようになりました。

写真花嫁

アメリカやカナダでは、一世の多くが単身で渡航した男性であったため、結婚相手を求めて「写真花嫁」の制度が利用されました。写真と文通だけで結婚相手を決めるこの制度は、1920年に日本政府が旅券発行を禁止するまで続きました。しかし、この制度には様々な問題も存在し、結婚後に日本へ帰国する女性もいました。

歴史

日本からの移民

江戸幕府の鎖国政策を経て、明治維新後に日本は海外渡航を解禁しました。1884年以降、政府が労働者の海外移住を許可したことで、北米や南米への移民が始まりました。当初、多くの移民は「出稼ぎ」のつもりで渡航しましたが、次第に定住する人が増えていきました。

アメリカへの移民

初期の移民は、アメリカの近代化を学ぶ目的で渡米した学生や労働者が中心でした。しかし、1913年の「カリフォルニア州外国人土地法」により、一世は土地所有が制限されるなど、厳しい状況に置かれました。彼らは子供の名義で土地を所有するなど、法規制に対抗しました。

アメリカ人の一世に対する印象

アメリカ人は、一世を粗野で無学な人々だと見なす傾向がありました。しかし、実際には一世の多くは高い教育を受けており、犯罪率も低く、社会規範を遵守していました。彼らの倫理観は仏教に根ざしたものであり、社会秩序を重んじる姿勢は、他の民族集団よりも際立っていました。

人種差別と排日移民法

1900年代に入ると、一世に対する人種差別が激化し、排日運動が広がりました。1906年には、サンフランシスコ教育委員会が日系生徒を隔離するなど、差別的な扱いが行われました。1907年の「日米紳士協約」により、日本からの移民は制限されましたが、差別は収まりませんでした。

1924年には「排日移民法」が制定され、日本人の移民が禁止されました。これにより、一世は差別との戦いに敗れることとなりましたが、その中でカリフォルニアにおける米の栽培を成功させました。

強制収容

第二次世界大戦中、アメリカとカナダの政府は、日系人を強制収容所に収容しました。この際、市民権を持つ二世と市民権を持たない一世を区別することなく、多くの日系人が財産を失い、精神的な傷を負いました。

1988年、アメリカとカナダで強制収容に対する謝罪と補償が行われましたが、一世にとっては、遅すぎるものでした。

まとめ

一世は、異文化の地で苦難を乗り越え、日系人コミュニティを築き上げました。彼らの経験は、現代の日系人のアイデンティティ形成に大きな影響を与えています。本記事が、一世の歴史と文化を理解する一助となれば幸いです。

関連項目

日系アメリカ人市民同盟
全米日系人博物館
日系アメリカ人の一覧

外部リンク

Japanese American National Museum
在アメリカ合衆国日本大使館（ワシントンD.C.）
Densho: The Japanese American Legacy Project

* 日系アメリカ人　オンライン歴史資料館

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