一五一会

一五一会（いちごいちえ）

一五一会は、日本のヤイリギターが開発・発売している4弦の弦楽器です。その構造はギターに近く、調弦は三線に近いという特徴を持ち、「4絃のリュート属撥弦楽器」と表現されることもあります。ここでは、一五一会のバリエーションモデルである音来（ニライ）と奏生（かない）についても詳しく解説します。

概要

一五一会は、沖縄県出身のバンド・BEGINとヤイリギターが、「三線とギターのチャンプルー（混合）」というコンセプトで共同開発した楽器です。2003年にベーシックモデルが発売され、その後2004年に音来、2006年に奏生が加わりました。

大正琴（1912年発明）以来、約90年ぶりに日本で生まれた創作楽器（電子楽器を除く）とされています。しかし、4弦の撥弦楽器はラテンアメリカ諸国で一般的であり、アメリカのシガーボックスギターにも同様の構成が見られます。

ギターの音色を手軽に三線の感覚で演奏できるのが、一五一会の大きな特徴です。指一本でコードを押さえることができ、キャッチコピーにあるように「世界一簡単に弾き語りの伴奏ができる」のが魅力です。その一方で、琉球音楽の三線やハワイアンのスラッキーギターの代わりとして、あるいはブルース、フォーク、ロックなどのポピュラー音楽の演奏にも用いられるなど、奥深さも持ち合わせています。近年では、従来の音楽ジャンルにとらわれない演奏も試みられています。

2012年からは、一五一会の演奏技術を競う「一五一会世界大会」も開催されるようになりました。

バリエーション

一五一会には、ベーシック、音来、奏生の3種類のバリエーションがあり、それぞれボディの形状が異なります。ベーシックと音来は同じスケール（ネックの長さ）ですが、奏生はより短いスケールを採用しています。

一般的に「一五一会」という場合、ベーシックモデルのみを指すこともあれば、音来、奏生を含めた3種類すべてを指すこともあります。

ベーシック

2003年に最初に発売された一五一会がこのベーシックモデルです。「ベーシック」という名前ですが、現時点では完成度の高い上位機種という位置づけです。この名称は、今後自由にバリエーションを展開できるという発想から付けられました。素材や塗装などを特注した場合は「カスタム」モデルとなります。

スケール長は630mmで、標準の調弦はG-D-G-Dです。左右非対称のボディ形状は「風に靡く短冊」をイメージしてデザインされており、ギターと異なり正座でも弾きやすいのが特徴です。名前の由来は、弦の音程が最も太い弦から見て一度と五度の関係になっていることを、四字熟語「一期一会」の発音にかけたものです。

音来（ニライ）

ベーシックモデルが比較的高価であったため、「もっと手軽に楽しめる一五一会が欲しい」というユーザーの声に応えて、価格を抑えた廉価版として2004年に発売されました。後に、押さえやすいナイロン弦を採用した音来Gも追加されています。2009年には音来、音来Gともにマイナーチェンジが行われました。スケール長はベーシックと同じ630mmで、調弦も同じです。名前の由来は、沖縄に伝わる海の彼方の理想郷・ニライカナイです。

奏生（カナイ）

押さえやすいナイロン弦を採用し、幅広い年齢層に対応できるように軽量化・コンパクト化を図ったモデルです。ボディ形状はベーシックや音来の特徴的な形を踏襲せず、「亀の甲羅」を意識した楕円形となっています。2006年に発売され、価格はベーシックの25％程度と、国産弦楽器としては最廉価版に近い設定です。2009年にマイナーチェンジされ、さらに軽量化・コンパクト化されました。スケール長は475mmと短いため、標準の調弦はC-G-C-Gとなっています。高音の2弦を1オクターブ高く調弦するのは他のモデルと同様です。大正琴やマウンテン・ダルシマーのようにテーブルに置いたまま演奏できるよう、ヘッドの裏側にかかとを付ける工夫も施されています。名前の由来は、音来と同じくニライカナイです。

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