一切漏経

『一切漏経』の解説

『一切漏経』（いっさいろきょう）は、パーリ仏典の経蔵中部に収められた第2経であり、煩悩の排除による解放を説いた重要な教えです。別名『一切煩悩経』とも称され、様々な漢訳経典にも類似の内容が見られます。中でも『中阿含経』に収められた「漏尽経」や、『一切流摂守因経』はこの教えの関連文献として知られています。

経名に含まれる「漏」は、煩悩を指す別称であり、この経はその煩悩をどのように取り除いていくかを具体的に教えています。

経の構成と場面設定

この経典は、釈迦がサーヴァッティのアナータピンディカ園、すなわち祇園精舎に滞在していた際の出来事から始まります。そこで、釈迦は弟子たちである比丘たちに向かって、煩悩を捨てるための方法を示しました。

煩悩の制御方法

釈迦は、煩悩を制御するために以下のいくつかの手法を提唱しました：

1. 観察 — 四漏: 煩悩の種類を理解し、自らの内面を観察すること。
2. 防護 — 六根: 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、意識といった六つの感覚を守ること。
3. 受用 — 衣食住: 自身が必要とする物を受け入れる際の態度を改善すること。
4. 忍辱 — 三業（身口意）: 身体、言葉、心の行いにおいて、他者からの苦難に耐えることを学ぶこと。
5. 回避 — 三世: 過去、現在、未来のいずれにおいてもお気をつけて生きること。
6. 除去 — 三毒（貪瞋痴）: 貪り、怒り、無知という三つの毒を取り除く努力をすること。
7. 修習 — 七覚支: 七つの覚醒支を修習し、心を清らかに保つこと。

比丘たちはこの教えを聞いて非常に喜び、釈迦の智慧に感銘を受けました。それぞれの手法は、現世に住む者にとっても実践可能なものであり、煩悩から解放されるための道標となります。

出典・関連文献

この経の日本語訳には、以下のような文献があります：

• - 『南伝大蔵経・経蔵・中部経典1』（第9巻）大蔵出版
• - 『パーリ仏典 中部（マッジマニカーヤ）根本五十経篇I』片山一良訳 大蔵出版
• - 『原始仏典 中部経典1』（第4巻）中村元監修 春秋社

これらの文献は、『一切漏経』の教えを理解するうえで非常に貴重なリソースとなります。

関連項目

本経典には、以下のような関連項目もあります：

• - 煩悩
• - 四漏
• - 六根
• - 三業
• - 三毒
• - 七覚支

外部リンク

興味のある方は、以下のリンクも参照してください：

• - Sabbāsavasuttaṃ - Tipitaka.org
• - Sabbasava Sutta: Discourse on All Āsavas - translated by Burma Piṭaka Association
• - Sabbasava Sutta: All the Fermentations - translated by Thanissaro Bhikkhu

このように、『一切漏経』は煩悩を取り除くための具体的な方法を示した重要な経典であり、精神的な成長を求める人々にとって有意義な指針を提供しています。

もう一度検索