一反木綿 (ゲゲゲの鬼太郎)

一反木綿

一反木綿（いったんもめん）は、水木しげるの漫画『ゲゲゲの鬼太郎』に登場する妖怪であり、鬼太郎の頼もしい仲間の一人です。白い布のような姿で、空を自在に飛び回ります。その見た目からは想像できないほどの戦闘能力を持ち、鬼太郎をサポートする重要な役割を担っています。

概要

一反木綿は、長さ約10メートルの一反の白い布に目と腕がついた姿をしています。伝承では、人に巻き付いて窒息死させる恐ろしい妖怪とされていますが、『ゲゲゲの鬼太郎』では、鬼太郎の仲間として、善良で正義感の強い妖怪として描かれています。ねずみ男からは、政治思想がタカ派であると評されています。

普段は鬼太郎を乗せて移動したり、空中戦をサポートしたりすることが多いですが、敵に巻き付いて締め上げたり、体の縁を刃物のようにして斬りつけたりするなど、攻撃的な面も持ち合わせています。体重は約2キログラム、厚さ0.5ミリと非常に薄く、常に清潔さを心がけています。布でできているため、火や刃物には弱いですが、高い再生能力を持っているため、すぐに元通りになります。

鹿児島県大隅地方に伝わる妖怪とされており、アニメ第3作以降は九州弁（鹿児島弁）で話すようになりました。この設定は原作にも取り入れられ、ゲーム作品などにも定着しています。実写映画版では、柳沢慎吾さんの「あばよ!」「いい夢見ろよ」といったフレーズが使用されています。

一見すると細い目しかないように見えますが、鬼太郎たちと食卓を囲む場面や、アニメでは口や鼻、耳がある描写もされています。また、尻子玉を抜かれて腑抜けになったり、腕をまくったりするシーンもあります。急所として心臓が存在することも判明しています。

初登場は、原作の「妖怪大戦争」およびそのアニメ化である第1作第10話です。最初は西洋妖怪との戦いで命を落としますが、その後復活し、鬼太郎の仲間として活躍を続けます。

アニメ第3作では、同族が存在することが示唆されており、ねずみ男が彼女を紹介すると言っています。

妖術・技

一反木綿は、豊富な経験を持ち、鬼太郎ファミリーの中でも戦闘力を頼りにされています。普段の飛行能力だけでなく、鬼太郎や砂かけ婆の武器としても機能することがあります。

飛行能力

鬼太郎や仲間を乗せて空を飛び、事件現場へ急行したり、空中戦をサポートします。特に、巨大な妖怪や飛行能力を持つ妖怪との戦闘では、鬼太郎と抜群のコンビネーションを見せます。飛行速度は非常に速く、成層圏でも活動可能です。しかし、寒さに弱く、雪雲の中では凍ってしまうことがあります。人間大の仲間なら4～5人程度は乗せられますが、3人程度でも重く感じることもあります。水に濡れたり、食べ過ぎたりすると、体が重くなり飛べなくなることがあります。酔っぱらって飛べなくなることもあります。

風に乗って飛ぶと説明されることもありますが、大気圏外まで飛んでいる描写もあります。

巻き付き / しめつけ

伝承でも知られる得意技で、帯状の体を敵に巻き付けて締め付けます。八百八狸の幹部狸を締め殺したり、ねずみ男を窒息寸前まで締め上げたこともあります。巻き付いた状態からそのまま飛行して、相手を宙吊りにしたり、運んだりすることもあります。

投げ飛ばし

相手に巻き付いた後、体を伸ばして戻す勢いで投げ飛ばします。猫娘が切り裂いた狂骨の頭を投げ飛ばしたり、傘化けとのコンビでは回転を加えて投げ飛ばしたりしました。

スクリュー攻撃

空中で加速し、急旋回するとともに尾を螺旋状に回転させ、先端に掴まっている仲間を錐揉み回転させて投げ飛ばし、肉弾攻撃を強化します。

もめん切り

体の縁を刃物のようにして敵を切り裂きます。頭の先端が骨質であるという設定もありますが、体のどの部分も硬化させることができます。

刺殺

尾の先端を尖った刃にして突き刺します。缶切り代わりに使用されたこともあります。

一反もめん旋風斬 / 一反もめん螺旋槍

目玉おやじが作った薬で強化された際には、鬼太郎と合体技を使用できるようになりました。鬼太郎の腕に巻き付き、刃の鞭や鋭い槍として機能します。

再生能力

布でできているため、刃物などで切り裂かれやすいですが、水を含むか糸で縫合することで再生します。しかし、アニメによっては水に濡れると動きが鈍くなるという弱点もあります。両脇から下（尻尾）が千切れても、時間が経てば自然に再生します。霊的な力を伴う攻撃には、致命傷を受けることもあるようです。

再生粉末

死んだ者を生き返らせる粉状の薬を持っています。鬼太郎を蘇らせたこともありますが、使用量には限りがあるようです。

目

複眼で高い視力を持っています。しかし、老眼気味になることもあります。目が細すぎるため、眠り砂が効かないこともあります。

擬態・道具化

帯状の布でできていることから、様々なものに擬態したり、道具の代わりに使われることがあります。マフラーや包帯、梯子、ホース、スコップなどに変化しました。しかし、囚われの身となった際には、褌や磔にされたり、紐にされたり、テーブルクロスにされたりなど、布状の体質ならではの屈辱を受けることもありました。バスタオル代わりにされたり、竹ひごの編み物のようにされたこともあります。また、夜叉に魂を食われたねずみ男の顔を隠す打ち覆いにされたり、ポの腰巻にされたり、子泣き爺の褌にされたりしたこともあります。女性の水着になりたいと発言したこともあります。

隙間移動

薄い体を活かして、狭い隙間から出入りしたり、閉所に潜伏したりすることができます。

目隠し

敵の目を覆って、鬼太郎に攻撃のチャンスを作ります。

旋風

空中で回転して旋風を起こします。

足払い

体を伸ばして、相手の足を引っかけて転倒させます。

パチンコ

体を木に巻き付けて、中央に物や人を置いて射出します。

コットン・スプラッシュ

水を含んだ状態で空中回転し、水飛沫を飛ばします。火に弱い妖怪に対して有効です。

アニメにおける変遷

一反木綿は、アニメシリーズを通して重要な役割を担っており、登場回数も多いですが、台詞がない回も少なくありません。

第1シリーズ

登場回数は少なく、無口なキャラクターでした。

第2シリーズ

飛行手段としての登場が増えましたが、やはり無口なキャラクターでした。目が青くなりました。

第3シリーズ

鬼太郎を背に乗せて現場へ急行するだけでなく、他の妖怪を運ぶ役割も担うようになりました。九州弁を話す、饒舌でひょうきんなキャラクターになりました。女好きという設定も加わりました。

第4シリーズ

鬼太郎を運ぶ役割は変わりませんが、人数が多いと不平を言うようになりました。口癖は「～でごわす」「わかりもした」。美女好きという設定がより強調されました。体がスマートになり、表面のしわなどが細かく描かれるようになりました。

第5シリーズ

体の手入れにこだわりを持つキャラクターになりました。本の読み聞かせが上手く、子供好きという設定も強調されました。水に濡れると動きが鈍くなるという弱点が加わりました。

第6シリーズ

口癖は「コットン承知」「オーマイコットン」。女の子が大好きで、すぐ口説きに行くという設定になりました。ねずみ男に利用されたり、出会い系シェアハウスで恋をしたりと、人間味あふれるエピソードが描かれました。

他作品におけるキャラクター

ドラマ「ゲゲゲの女房」では、ヒロインのイメージで描かれたキャラクターが登場しました。

劇場版『妖怪ウォッチ』にも登場し、鬼太郎たちを乗せて空を飛びました。

演者

様々な媒体で、以下の方が一反木綿を演じています。

声優

杉浦宏策（第1シリーズ第10話）
富田耕吉（第1シリーズ第22話）
山田俊司（第2シリーズ）
八奈見乗児（第3、第5シリーズ）
龍田直樹（第4シリーズ）
山口勝平（第6シリーズ）
緒方賢一（ゲーム）
増岡弘（月曜ドラマランド）
西尾徳（アニメ映画）

俳優

柳沢慎吾（実写映画シリーズ）

脚注

注釈

出典

参考文献

アミューズメント出版部編『アニメ版ゲゲゲの鬼太郎妖怪辞典』講談社、2010年7月12日。ISBN 978-4-06-216335-4。

外部リンク

* 水木しげるロードの妖怪たち（境港市観光協会内）

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