一子相伝

一子相伝（いっしそうでん）

一子相伝とは、学問、技芸、武術などにおいて、師がその奥義、秘法、本質などを、自分の子供のうち一人、または特に選んだ一人の弟子にのみ伝授し、他の者には一切秘密にするという伝承方法を指します。この方式は、知識や技術の散逸を防ぎ、特定の家系や集団内でのみ高度な専門性を維持する目的で行われてきました。

一子相伝の特徴

秘伝性: 伝承される内容は、一般には公開されず、限られた後継者のみが知ることができます。
独占性: 奥義や技術は特定の一族や師弟関係でのみ継承されるため、他者が容易に習得することはできません。
継承者の限定: 師は後継者を厳選し、その人物にのみ長年にわたる指導を行います。

一家相伝との違い

一子相伝と似た言葉に「一家相伝（いっかそうでん）」があります。一家相伝は、特別な技術や知識が特定の家に代々伝えられることを意味し、必ずしも子供一人に限定されるわけではありません。家族全体、もしくは選ばれた家族の一員が継承者となる場合があります。

一子相伝のメリット・デメリット

メリット

知識、技術の純粋性が保たれる。
秘伝としての価値が高まる。
後継者は師から手厚い指導を受けられる。

デメリット

後継者が途絶えた場合、技術が失われるリスクがある。
技術の発展が閉鎖的になりやすい。
限られた人材しか育成されない。

特許制度との関係

一子相伝は、技術や知識を独占的に保持する方法ですが、技術の発展を阻害する側面があります。そのため、近代社会においては、発明を公開することで一定期間の独占権を与える「特許制度」が設けられています。特許制度は、発明者に経済的なインセンティブを与えつつ、技術の公開を促し、社会全体の発展に貢献することを目的としています。一子相伝の閉鎖性とは対照的に、特許制度は技術のオープン化を促進する仕組みと言えるでしょう。

関連項目

口承
口伝
伝承
古今伝授
血脈相承

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