一尾伊織

一尾伊織（いちお いおり）

一尾伊織は、江戸時代前期に活躍した旗本であり、同時に茶人としても名を馳せた人物です。その生涯は、武士としての責務を果たす傍ら、文化的な活動にも深く関わったことで知られています。

生い立ちと家系

伊織は、旗本・一尾通春の子として生まれました。母は、大友吉統の娘という家柄の良い人物です。一尾氏は、その祖を辿ると、久我晴通の四男・久我三休が一尾庄に住み着いたことに始まります。伊織は、その孫にあたります。武士の家系でありながら、文化的な素養も高く、茶人としての才能を開花させました。

武士としての経歴

寛永10年（1633年）に父・通春が亡くなると、伊織は翌年、父の遺領の中から1,000石を相続し、書院番という役職に就きました。その後、職を辞して小普請組に所属しました。貞享元年（1684年）には致仕し、この頃から徹斎と号しました。

茶人としての活動

伊織は、細川忠興（三斎）の家臣である津川四郎左衛門に茶道を学びました。この学びを基に、三斎流一尾派という独自の流派を創始しました。茶道においては、竹の花筒や茶杓の製作に優れた才能を発揮し、自らも茶道具を制作しました。さらに、琵琶の製作にも携わるなど、多才な人物であったことが窺えます。

晩年と著作

元禄2年（1689年）、伊織は91歳という長寿を全うし、この世を去りました。その著作としては、「一尾流之書」が知られています。これは、彼が創始した茶道流派の奥義を記した貴重な文献であり、後世の茶道に大きな影響を与えました。

一尾家の後継

伊織には、実子がいなかったため、弟・通利の子である通命を娘の婿として迎えました。しかし、通命は早世したため、その子である通門を養子に迎えましたが、こちらも夭折しました。最終的には、土井甲斐守の家臣であった大野市左衛門定秀の子・通定を養子に迎え、家督を継がせました。この経緯からも、伊織が家系の維持に尽力したことがわかります。

まとめ

一尾伊織は、武士としての責任を果たしながら、茶人としての才能も開花させた人物です。彼が創始した三斎流一尾派は、茶道の世界に大きな足跡を残しました。また、茶道具の製作や琵琶の製作にも携わるなど、多岐にわたる文化活動を通じて、その名を後世に伝えました。

参考資料

寛政重修諸家譜
日本人名大辞典（講談社）

もう一度検索