久我晴通

久我晴通の生涯

久我晴通（こが はるみち/はれみち）は、戦国時代の公卿であり、その生涯は波乱に満ちたものでした。太政大臣・近衛尚通の次男として生まれ、右大臣・久我通言の養子となり、公家社会で重要な役割を担いました。彼の人生は、室町幕府の混乱期と重なり、政治的な動乱の中でその才能を発揮しました。

生い立ちと初期のキャリア

永正16年（1519年）、晴通は近衛尚通の息子として誕生しました。享禄4年（1531年）には、久我邦通が後継者なく亡くなったため、その父である久我通言の養子となりました。天文2年（1533年）に叙爵し元服、侍従に任じられ、その後も右近衛少将、右近衛中将と順調に昇進しました。天文5年（1536年）には従三位権中納言となり、養父の出家に伴い久我家の家督を継承、源氏長者および奨学院別当にも任命されました。

公家としての活躍

天文12年（1543年）には権大納言に、天文14年（1545年）には淳和院別当に就任しました。義兄である足利義晴が政情不安から近江に避難した際には、兄の近衛稙家や大覚寺義俊とともに同行しました。しかし、天文22年（1553年）に右近衛大将となった後、突然出家し宗入と号して35歳で朝廷を去りました。この出家の背景には、実姉である慶寿院との口論があったとされています。

出家後の活動

出家後も、晴通は政治的な影響力を失いませんでした。永禄元年（1558年）には京都郊外の八幡に居を構え、ここを拠点としました。永禄2年（1559年）には大友義鎮の九州探題補任に関与し、室町幕府と大友氏の仲介役を務めました。また、永禄3年（1560年）と6年（1563年）には豊後国を訪れ、特に後者では大友氏と毛利氏の和平交渉に尽力しました。

足利義昭との関係

永禄8年（1565年）の永禄の変で姉の慶寿院や甥の足利義輝が殺害された後も、晴通の生活は表面的には変化がありませんでした。しかし、義輝の弟である義昭を擁立する動きに加わり、義昭が織田信長に擁立され上洛すると、その将軍宣下のために奔走しました。甥の近衛前久が義昭と対立する中、晴通は義昭に近侍し、所領の安堵や新たな役職を得ています。

晩年と死

元亀2年（1571年）には、再び義昭の命で豊後国に派遣され、大友氏と毛利氏の和平仲介に努めました。晩年の晴通については不明な点が多いものの、足利義昭の書状とされるものが実は晴通の書状であったという研究結果もあり、義昭追放後も彼に近侍していた可能性が指摘されています。天正3年（1575年）3月13日に病死し、その直後には長男の通堅も病死しました。

その後の久我家

久我家の家督は、通堅の嫡男である久我敦通が継承しました。また、次男の具堯は分家し、岩倉家を興しました。その子孫には、明治維新で活躍した岩倉具視がいます。晴通の生涯は、公家社会における政治的役割、室町幕府との関係、そして戦国時代の動乱が複雑に絡み合ったものでした。

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