一梅斎芳峰

一梅斎芳峰（いちばいさい よしみね）は、生没年不詳の浮世絵師で、江戸時代末期から明治時代にかけて大坂を中心に活動しました。歌川芳梅の門人であり、武部安兵衛という俗名を持っていました。一梅斎の他に、胡蝶楼、旭亭、玉亭といった号も使用しました。

作画期は安政3年（1856年）から明治10年（1877年）頃までとされ、役者絵や戦争絵などを手がけました。特に、明治時代に入ってからは、西南戦争を題材にした作品を制作しています。これらの作品は、当時の社会情勢や世相を反映しており、歴史資料としても価値があります。

現存する作品としては、以下のようなものが知られています。

「安藤喜八郎（嵐璃珏）　生田伝八郎（嵐吉三郎）　遠城治左衛門（尾上多見蔵）」：中判錦絵3枚続。安政4年8月、大坂中の芝居『敵討崇禅寺馬場』より。池田文庫所蔵。
「武蔵坊弁慶・尾上多見蔵　源うし若丸・坂東彦三郎」：中判錦絵2枚続。安政5年正月、中の芝居『柳桜春錦画』より。池田文庫所蔵。
「征討電聞　都の城攻戦」：大判錦絵。明治10年。

これらの作品から、一梅斎芳峰が役者絵だけでなく、時事的な題材にも関心を持ち、積極的に作品に取り入れていたことがわかります。また、役者の個性を捉えた表現や、合戦の様子を生き生きと描く描写力も評価されています。

一梅斎芳峰の研究は、以下の文献を参照することで、より深く知ることができます。

日本浮世絵協会編　『原色浮世絵大百科事典』（第2巻）　大修館書店、1982年
* 『上方役者絵集成』（第3巻）　財団法人阪急学園池田文庫、2001年

これらの文献は、一梅斎芳峰の作品や画風、時代背景について詳しく解説しており、理解を深める上で貴重な情報源となります。

一梅斎芳峰は、幕末から明治にかけての大坂の浮世絵界において、独自の地位を築いた絵師の一人と言えるでしょう。その作品は、当時の大坂の文化や社会を今に伝える貴重な資料として、高く評価されています。

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