一説部

一説部について

一説部（いっせつぶ、サンスクリット: एकव्यावहारिक, IAST: Ekavyāvahārika）は、部派仏教の一つであり、古代インドにおいて形成されました。この部派は、アショーカ王朝の時代に大衆部から分裂したと考えられています。仏教の歴史における一説部は、その教義や思想が後の大乗仏教の発展にも影響を与えたとされています。

歴史的背景

チベットの僧侶ラマ・ターラナータは、一説部、鶏胤部、そして説出世部が本質的に同じ教義を持つと述べています。彼によると、エーカヴィヤーヴァハーリカという名は大衆部全体で使用される言葉であり、これらの部派は大衆部が初めて分裂した際に生じたものであるとされています。アンソニー・ケネディー・ウォーダーは、一説部の教えは後世にほとんど残されず、大衆部の一部と見なされたと指摘しています。

ブッダの入滅から約200年後、多くの部派がラージャグリハを北へ移動し、大乗仏教の教えが三蔵にどのように統合されるかを巡って対立が生じました。この分派の動きは、経典の権威に対する相対的な態度によるものであり、一説部は大乗経典を仏教の教えとして受け入れていました。

教義の特徴

教義に関しては、世友の『異部宗輪論』において、一説部、鶏胤部、そして説出世部の教義は基本的に変わらないものとして扱われています。世友の記述によれば、これら三つの部派は共通して四十八のテーゼを持っているとされています。

一説部の名は、「仏陀は唯一で統合された超越的な意味を持つ言葉を語った」という教義に由来しています。彼らはブッダの超越性を強調し、彼が常に悟りを開いた存在であり、根本的に非物質的であると説いています。ブッダの教えが超越的な意味を持つと考えられるのと同様に、四諦は一つの叡智によって完全に成就するものであると理解されています。

また、一説部では知覚能力を持つ存在は根本的に純粋な精神を持っていると考えますが、この精神は苦しみによって曇られるとされます。この考え方は、ブッダの心の本性が自分たちのそれと根本的に同じであるという信念に基づいています。この見解は、大乗仏教における仏性や法身の教義と一致しており、『法華経』や『華厳経』に見られる教えと比較されることが多いです。

結び

一説部は、その教義が後の仏教思想に与える影響や、大乗仏教との関係を考察する上で重要な存在とされています。部派仏教の中での役割や、仏教の歴史における位置付けについて、さらなる研究が期待されています。

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