丁徳興

丁徳興（てい とくこう）：朱元璋を支えた勇猛な将

丁徳興（1327年 - 1367年）は、元朝末期の混乱期に頭角を現した軍人であり、朱元璋の右腕として活躍しました。定遠（現在の安徽省定遠県）の出身で、その武勇と智略で朱元璋の天下統一に大きく貢献しました。

生涯初期と朱元璋への忠誠

丁徳興は、若い頃から武術に優れ、並外れた勇気の持ち主でした。朱元璋が挙兵した際、丁徳興はすぐにその麾下に加わり、忠誠を誓いました。朱元璋は、彼の容貌を気に入り「黒丁」と呼んで重用しました。彼の初期の活躍として、洪山寨攻略戦では、わずか百騎で数千の敵軍を打ち破り、多くの兵を降伏させるという驚異的な戦果を挙げました。その後も、滁州や和州の攻略、青山に立て籠もる盗賊の討伐などで、その名を轟かせました。

長江渡河作戦と各地の転戦

至正15年（1355年）6月、丁徳興は朱元璋軍の長江渡河作戦に参加し、采石や太平を攻略しました。その後も、溧水や溧陽を次々と制圧し、常に先頭に立って戦いました。至正16年（1356年）2月には、蛮子海牙の水寨を破り、方山の戦いでは陳兆先を打ち破りました。さらに3月には、集慶で陳兆先を捕縛し、鎮江を攻略して、管軍総管に任命されました。その後も、金壇、広徳、寧国などを次々と攻略し、その勢いを増しました。

常州攻略と寧国の反乱鎮圧

至正17年（1357年）3月には、常州攻略に参加し、左翼元帥に進みました。その後、寧国で反乱が勃発すると、胡大海に従い、これを鎮圧しました。さらに6月には江陰、7月には徽州と石埭、10月には池州と樅陽を攻略するなど、その活躍は目覚ましいものでした。江州と安慶の攻略戦でも勝利し、その勇名をさらに高めました。

太湖の要衝を抑え、徐達の勝利をアシスト

至正18年（1358年）8月、江陰の救援に向かった丁徳興は、江西付近の州県を攻略しました。その後、趙普勝の攻撃を退け、10月には徐達、邵栄とともに宜興を攻めました。朱元璋は、宜興城の西が太湖に通じていることを指摘し、このルートを遮断すれば勝利できると判断しました。丁徳興は、この重要な任務を任され、太湖口を抑えました。その間に、徐達と邵栄は宜興城を急襲し、見事城を攻略しました。この功績により、丁徳興は鳳翔衛指揮使に任命されました。朱元璋は、丁徳興を「攻めて勝てなかったことはない。戦えば必ず勝つ虎将である」と大いに称賛しました。

陳友諒との戦いと鄱陽湖の戦い

至正20年（1360年）5月、陳友諒が龍江に侵攻すると、丁徳興は石灰山で奮戦し、勝利を収めました。至正21年（1361年）には、安慶を回復し、12月には九江を攻略しました。至正23年（1363年）3月には、安豊の救援に向かい、呂珍を破り、左君弼を敗走させました。同年7月には、鄱陽湖の決戦にも参加し、陳友諒軍との激戦を繰り広げました。

武昌、廬州、湖南各地の攻略戦

至正24年（1364年）2月、丁徳興は武昌を攻略しました。7月には廬州を攻略し、12月には湖南、衡州の諸郡を攻略しました。その後も、至正25年（1365年）10月には、徐達に従い、淮東を攻略しました。

浙西平定と最期

至正26年（1366年）4月には、浙西を攻め、旧館の戦いで張士誠軍を破りました。11月には湖州を攻略し、平江を包囲しましたが、その最中に亡くなりました。その功績を称え、都指揮使が贈られました。

死後の追封と顕彰

洪武元年（1368年）、丁徳興は済国公を追封され、功臣廟に祀られました。その武勇と功績は、後世にまで語り継がれています。

まとめ

丁徳興は、元末の混乱期において、朱元璋を支え、その勢力拡大に大きく貢献した傑出した武将でした。常に先頭に立って戦い、数々の戦いで勝利をもたらした彼の功績は、明王朝の成立に欠かせないものでした。彼の勇猛果敢な戦いぶりは、後世の人々にも勇気と希望を与え続けています。

参考文献

『明史』巻1　本紀第1 太祖1
『明史』巻130　列伝第18　丁徳興
『国初群雄事略』巻4　陳友諒
『国初群雄事略』巻8　張士誠

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