丁玉

丁玉（てい ぎょく）は、生年不詳、1380年に処刑された、元末から明初の激動期を生きた軍人です。本貫は河中府とされています。

元々は国珍という名で、韓林児に仕えて御史を務めていました。当時から弁舌の才能で知られており、その名声は高かったと伝えられています。1363年、張士誠の部将・呂珍が安豊を攻略すると、国珍は朱元璋に帰順しました。朱元璋の下で陳友諒討伐に従軍し、鄱陽湖の戦いにも参加、九江府知府に任命されています。その後、南京に帰還した際、彭沢の山民が反乱を起こすと、国珍は自ら郷里の兵を集めてこれを鎮圧しました。朱元璋は国珍の武略を高く評価し、指揮を兼任させ、この時に国珍は「玉」と改名しました。

丁玉は傅友徳に従い衡州を攻略し、指揮同知として同地に駐屯、さらに永州の監督守備も担当しました。文武両道に秀でていた丁玉は、新たに帰順した人々を巧みに宥め、その人望と威光は非常に高かったと言われています。1368年には都指揮使に進み、間もなく行省参政を兼ねて広西に駐屯しました。その後も1373年に参知政事、1374年には右丞と昇進を重ねています。1376年には湯和、傅友徳らと共に延安の防備を固め、1377年に南京に召還されると右御史大夫に任じられました。

1377年、四川の威州・茂州の少数民族の首長である董貼里が反乱を起こすと、丁玉は平羌将軍として鎮圧に向かいました。威州まで進軍すると、董貼里は降伏しました。丁玉は承制により威州千戸所を設置しています。1379年には松州の少数民族が起こした反乱を鎮圧し、指揮の高顕らを派遣して松州に築城させ、軍衛の設置を願い出ました。しかし、朱元璋は松州は山が多く、田地が少ないため、軍を養うことが難しいとして難色を示しました。それでも丁玉は松州が西羌の要地であり、軍衛を置く必要があると主張し、最終的にはこの主張が認められ、松州に軍衛が設置されました。

同時期に、眉県の彭普貴が宗教反乱を起こし、14もの州県が焼き払われるという事態が発生しました。指揮の普亮らが鎮圧に失敗したため、丁玉が討伐を命じられ、見事にこれを鎮圧。その功績を朱元璋に賞賛され、左御史大夫に転じ、凱旋後には大都督府左都督に任じられました。しかし、1380年、胡惟庸と姻戚関係にあったことが原因で、胡惟庸の獄に連座し、処刑されるという悲劇的な結末を迎えました。その才能と功績にもかかわらず、激動の時代に翻弄された人物と言えるでしょう。

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