湯和

明朝建国の功臣、湯和

湯和（とう わ、1326年 - 1395年）は、明朝の建国に大きく貢献した武将です。字は鼎臣といい、元末の混乱期に現在の安徽省鳳陽県で生まれました。身長が7尺あったと伝えられる大柄な人物でした。

若き日の蜂起と朱元璋との出会い

湯和は孤児として育ちましたが、後の明の初代皇帝となる朱元璋とは幼馴染でした。20代の頃、郭子興が率いる農民蜂起軍に参加し、10数名の仲間を率いて武功を重ね、千戸という地位を得ました。この頃、朱元璋を自らの軍に誘ったとも、逆に湯和が朱元璋のもとに駆けつけたとも言われています。

朱元璋は郭子興の軍に参加後、急速に頭角を現し、郭子興の義理の娘を妻に迎え、勢力を拡大しました。

朱元璋の部下として

1354年、湯和は徐達や費聚らと共に朱元璋の部下となり、定遠攻略に参加しました。朱元璋軍は道中で盗賊を吸収しながら勢力を増し、滁州を占領しました。1355年には、朱元璋が都元帥に昇格し、湯和は彼の配下として采石や太平を攻略しました。同年、郭子興が亡くなると、朱元璋がその後継者となりました。

1356年、朱元璋は集慶を占領して応天府と改称しました。元軍は奪還を試みましたが、湯和は徐達や鄧愈らと共に奇襲をかけてこれを撃退し、その功績により統兵元帥に任命されました。翌年には常州金壇を攻略しました。

張士誠との戦いと周辺国の掃討

朱元璋は「張士誠に対しては守りを主体とし、陳友諒に対しては攻めを主体とする」という戦略を採用しました。湯和は1357年から常州を守備し、張士誠軍の攻撃を何度も退けました。1365年、朱元璋は徐達に張士誠の討伐を命じました。

1367年、湯和は御史大夫に任じられ、征南将軍として呉禎を副将に迎え、方国珍を攻撃しました。方国珍は海上に逃亡しましたが、廖永忠が盤峙島で待ち伏せし、12月に降伏させました。これにより浙東が平定されました。

同年、湯和は海上から福州の陳友定を攻略するため、福建に進軍しました。1368年1月、陳友定は2万の兵を率いて延平を守っていましたが、湯和と廖永忠らが水軍で延平に侵攻し、10日間で陥落させました。陳友定は自殺を図りましたが失敗し、応天に護送されて処刑されました。その後、湯和は大同、宣府を攻略しました。

北伐と北元との戦い

1368年、湯和は広東を攻略し、元将の何真を降伏させました。その後、徐達が率いる北伐軍に参加し、馮勝と共に懐慶、沢州、潞州を攻略しました。これにより元は北元と呼ばれるようになりました。

1369年、徐達が慶陽を攻略した後、湯和が後任として派遣されました。1370年には、李文中を大将とする北征軍に参加し、馮勝や鄧愈らと共に興和などの元領を降伏させました。同年11月には論功行賞が行われ、湯和は公の地位は逃したものの、中山侯に封じられました。侯に任じられた人物は28人おり、湯和はその筆頭に挙げられています。

1371年には、征西将軍となり、廖永忠や楊璟らと共に明昇を攻め、瞿塘や重慶を攻略し、明昇を降伏させました。

1372年、湯和は北元軍と断頭山で戦い敗北しました。1373年には、徐達を征虜大将軍とする北伐軍に副将として参加し、山西や北平の防御にあたりました。その後も、北平、陝西、河南の守備を担当し、1376年には傅友徳らと共に延安を守備しました。

1378年には信国公に封じられました。1381年には、北元のブハが侵攻しましたが、徐達を征虜大将軍とする軍の副将として、灰山でこれを撃退しました。

隠居と晩年

1380年の胡惟庸の獄をきっかけに、朱元璋は功臣の粛清を始めました。1384年、湯和は海上警備を命じられ、山東、江南北、浙東西沿岸に城を築き、浙東の民を率いて倭寇からの防御にあたりました。1385年、粛清の危機を感じた湯和は隠居を願い出ましたが、許されませんでした。そこで、酔った上での愚痴を装うなどした結果、翌年にようやく隠居を許されました。

故郷の鳳陽に戻り、屋敷を賜りました。1390年には口がきけなくなり、朱元璋は家臣を派遣して病状を調べさせました。1394年に朱元璋が見舞いに訪れた際には、よだれを垂らし、人に支えられながら礼を取ったと伝えられています。1395年8月に亡くなり、東甌王を追贈され、襄武と諡されました。

湯和は、明朝建国に大きく貢献した武将であり、朱元璋の信頼も厚かった人物でした。しかし、晩年は粛清の恐怖に怯え、隠居を余儀なくされました。その生涯は、明朝建国の光と影を象徴するものと言えるでしょう。

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