万延大判

万延大判は、万延元年（1860年）閏3月に発行された、日本最後の大判として知られています。別名、新大判とも呼ばれるこの大判は、従来の形式を踏襲しつつも、これまでの大判とは異なる重要な目的を持っていました。それは、単なる贈答品や蓄財の手段としてではなく、通貨としての役割も担うことでした。

万延大判は、万延小判に対して二十五両金貨としての価値を持って発行されました。この点は、これまでの大判が主に贈答用であったことと大きく異なります。

概要

万延大判の表面には、「拾両後藤（花押）」と墨書されています。この筆跡は、後藤家十七代目の典乗によるものです。上下左右には、丸枠桐極印がそれぞれ一箇所、計四箇所打たれています。形状は、これまでの大判と同様に角ばった楕円形です。しかし、従来の原則であった金一枚あたり四十四匁という量目から、大幅に引き下げられ、三十匁となりました。これは、実質的な価値が下がったことを意味します。

表面の加工には、鏨目（たがねめ）と熨斗目（のしめ）の二種類が存在します。現存数としては、熨斗目のものが多く確認されています。実際の量目は十両ではなくなりましたが、大判の代名詞として、これまでと同様に「拾両」と記されました。

裏面の極印による鋳造高は、時期によって異なっています。万延元年（1860年）閏3月23日から4月25日までは、鏨目で「恒・宇・吉」および「伊・宇・き」の極印が打たれたものが854枚鋳造されました。同年4月29日から文久元年7月10日までは、熨斗目で「吉・宇・き」および「吉・安・大」の極印が打たれたものが合計9,491枚鋳造されました。さらに、文久元年（1861年）7月11日から文久2年（1862年）12月24日には、再び鏨目に戻り、「吉・宇・き」の極印が打たれたものが4,565枚、「吉・安・大」の極印が打たれたものが2,187枚鋳造されました。これらの詳細な記録から、万延大判の製造過程を辿ることができます。

万延大判の通用期間は、万延元年（1860年）4月10日から、古金銀の通用が停止された明治7年（1874年）9月末まででした。この間、万延大判は通貨として流通し、経済活動を支える重要な役割を担いました。

このように、万延大判は、日本貨幣史において、大きな転換期に発行された重要な貨幣です。その特徴は、通貨としての役割を担ったこと、量目が大幅に引き下げられたこと、そして、製造時期によって極印の種類が異なることなどが挙げられます。これらの特徴は、万延大判が持つ歴史的価値をより一層際立たせています。

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