万治の石仏

万治の石仏

万治の石仏は、長野県諏訪郡下諏訪町に位置する、江戸時代前期の1660年（万治3年）に建立された石仏です。下諏訪町の指定有形文化財にも登録されており、その特異な姿から多くの人々を魅了しています。この石仏は、砥川を挟んで諏訪大社下社春宮の対岸にあり、その場所の小地名「石仏」もこの石仏に由来しています。

概要

万治の石仏は、高さ2.6メートル、幅3.8メートル、奥行き3.7メートルの安山岩をそのまま利用した胴体に、高さ約65センチメートルの仏頭を載せた構造をしています。胴体正面には、阿弥陀如来の坐像が彫られており、その衣には密教の曼荼羅を象徴する右卍、太陽、雷、雲、磐座、月などが刻まれています。これらの表現は、木食上人・弾誓に始まる浄土宗の作仏聖一派による「同体異仏」の思想を反映していると考えられています。この石仏は、明誉浄光と心誉廣春という二人の人物によって制作され、明誉が仏頭を、心誉が胴体の彫刻を担当したとされています。

江戸時代の史料には「えぼし石」や「みたらしの石仏」として記録されており、地元では「あみだ様」として親しまれていました。「万治の石仏」という名称は、胴体に刻まれた「万治三年」の銘にちなんで近年になって名付けられました。1932年の文献にはすでに「萬治の石佛」という記述が見られ、1961年には下諏訪町博物館の資料にも「万治の石仏（阿弥陀如来）」として記載されています。

全国的な知名度

万治の石仏が全国的に知られるようになったきっかけは、1974年に芸術家の岡本太郎がこの石仏を絶賛したことでした。岡本太郎は、新聞コラムなどでこの石仏を紹介し、その独特な魅力が広く知られるようになりました。さらに、小説家の新田次郎も石仏に着目し、その奇抜な外観から、イースター島の石像の頭部が日本に運ばれたものだという大胆な仮説を基にした小説『万治の石仏』を発表しました。これらの出来事により、「万治の石仏」という名称が定着し、全国的な観光名所としての地位を確立しました。

その後、「万治の石仏」の名称は商標登録され、菓子などの商品名として利用されるようになりました。また、「万治の石仏」の命名者については、複数の人物が関わっているとされていますが、実際には既存の名称であったことが判明しています。

近年の動向

近年では、新型コロナウイルス感染症の影響で、「万治」という言葉が「よろずおさまる」に通じることから注目が集まっています。石仏をモチーフにした関連グッズも人気を集めています。

伝承

万治の石仏には、その建立にまつわる伝承が残されています。1657年、諏訪高島藩主の命を受けた石工が、この大石を材料に諏訪大社下社春宮の鳥居を造ろうとしたところ、鑿を入れた場所から血が流れ出たため、作業を中止したと伝えられています。その後、夢の中で上原山に良い石材があると告げられ、その石で鳥居を造り、この大石を阿弥陀如来として祀ったとされています。

伸びる首

1991年、石仏の頭部が落下し、修復されました。その後、ある写真家が毎年撮影した写真から、首が伸びているように見えることが判明しました。テレビ番組で紹介されたことで観光客が増えましたが、安全確保のため再修復が行われました。修復の際、頭部の下から水や泥、賽銭が発見され、首が伸びた原因は、以前の修復時に使用した支柱に水が溜まり、凍結と融解を繰り返すうちに頭部が上昇したためと考えられています。修復前には、正面で4cm、左右で6～7cm上昇していたと測定されました。

アクセス

下諏訪駅よりバスで16分（宮の上バス停）
国道20号線沿い

周辺の観光スポット

諏訪大社下社春宮
慈雲寺
水月公園
大和監物の墓
* 矢除石

万治の石仏は、その独特な姿と歴史、数々の伝承によって多くの人々を惹きつけています。下諏訪町を訪れる際には、ぜひこの不思議な石仏を訪れてみてください。

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