三ッ林幸三

三ッ林幸三は、1893年（明治26年）9月24日、埼玉県北葛飾郡行幸村千塚（現在の幸手市千塚）に誕生しました。父は安五郎氏で、その二男として生まれました。地元の粕壁中学校で学び、卒業後は農業を営むなど、郷里の生活に根ざした青年期を過ごしました。1912年には家督を相続しています。

地方政治への関与は比較的早期から始まりました。1917年（大正6年）には北葛飾郡行幸村の収入役を務め、その後、1924年（大正13年）には行幸村会議員に選出され、村政に直接携わることになります。1928年（昭和3年）には埼玉県会議員選挙に立候補し当選。県議会議員として活動を開始し、立憲政友会に所属しました。県議会議員を務める傍ら、1939年（昭和14年）からは村長も兼任するなど、村と県の両方で地方行政に深く関わりました。この間、行幸村農会長や県参事会員といった要職も務め、地域の発展に貢献しています。

県議会議員としては重要な役割も担い、1942年（昭和17年）からは第46代埼玉県会議長を務めました（1944年まで）。地方政界での実績を背景に、戦後間もない1946年（昭和21年）に行われた第22回衆議院議員総選挙に埼玉県全県1区から出馬し、日本自由党公認で当選を果たし、一度だけですが国政に参画することになります。

しかし、国会議員としての活動は短期間に終わりました。1947年（昭和22年）、戦時中に大政翼賛会の行幸村支部長を務めていたことが理由で、GHQによる公職追放の対象となり、一切の公職から追われることになります。

公職追放解除後の1953年（昭和28年）に政界に復帰し、再び郷里の行幸村長に再選されました。翌1954年（昭和29年）、行幸村は周辺町村との合併により幸手町となり、氏は引き続き新しい町の運営に携わりました。この合併後の1956年（昭和31年）には、初代幸手町長に当選。以後、亡くなる1977年（昭和52年）まで、実に20年以上にわたり町長として幸手町の発展に尽力しました。この間、1954年（昭和29年）には藍綬褒章を受章しています。

町長としての活動に加え、埼玉県農業会議会長、埼玉県町村長会会長、全国町村長会副会長といった要職も歴任し、広範な地方行政分野で指導力を発揮しました。その長い政治家人生は、主に郷里である埼玉県、特に幸手地域での地方政治に捧げられました。

三ッ林氏の人物像については、趣味は書画や骨董を愛好し、宗教は真言宗を信仰していました。住所は終生、郷里である現在の幸手市千塚にありました。

家族構成では、妻はコト氏（古谷篤治氏の長女）で、安五郎氏を父に、くま氏を母に持ちました。特に、長男の弥太郎氏は、父と同じく政治家となり、衆議院議員や科学技術庁長官などを務め、三ッ林家は政治家一家として知られるようになります。さらに、弥太郎氏の息子の隆志氏、裕巳氏もまた衆議院議員を務めるなど、三代にわたる政治家を輩出しています。このように、三ッ林幸三氏の政治への情熱は、次の世代にも受け継がれていきました。

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