三ツ子島 (広島県)

三ツ子島：塩の島と海軍の歴史が交錯する広島湾の孤島

広島県呉市、倉橋島のすぐ北、広島湾に浮かぶ三ツ子島は、南北に連なる2つの島からなる無人島です。面積は約0.1平方キロメートル。呉市音戸町渡子に属し、その存在感は、対岸から望む白い風景として認識されています。

塩の島：日本の工業塩供給を支える拠点

南側の大きな島は、メキシコから輸入される工業塩の貯蔵・保管基地として機能しています。この事業を担うのは三ツ子島埠頭株式会社。同社は、日本の工業塩輸入量の75％を処理する、国内最大級の積替え・保管基地として半世紀以上にわたり操業を続けています。メキシコ、バハ・カリフォルニア半島のオホ・デ・リエブレ・ラグーンで生産された塩が、この島に運び込まれ、日本全国へと供給されています。このラグーンは古くから製塩が行われてきた場所で、現在では世界最大の製塩業者であるExportadora de Sal S.A.(ESSA)が年間約800万トンの塩を生産しています。その生産量の約半分が日本に輸出されており、日本の塩総輸入量の半分を占める規模となっています。ESSAはメキシコ政府と三菱商事の合弁会社であり、メキシコ政府が51％、三菱商事が49％の株式を保有しています。

歴史の痕跡：海軍検疫所と空母の悲劇

三ツ子島は、塩の島としての役割だけでなく、歴史的にも重要な場所です。昭和初期以降、大日本帝国海軍は、この島に伝染病予防のための検疫所「呉海軍病院三ツ子島消毒所」を設けていました。明治時代に似島にあった検疫所の老朽化と組織再編を背景に、1923年9月に着工、1928年11月に竣工しました。その建物の基礎は現在も島に残されており、往時の姿をしのばせます。また、島には空母天城が停泊していましたが、呉軍港空襲で被弾、浸水、転覆し、海底に沈みました。この出来事も、島の歴史に暗い影を落としています。

北側の小島：新たな所有者と未来

北側の小さな島は、長さ約276メートル、幅約43メートル、周囲約580メートル、面積約7600平方メートル、標高約20メートルの小さな島で、2つのこぶのような岩山があります。2009年、財務省中国財務局呉出張所は、この国有地を売却することを発表。2010年2月9日に行われた入札には、個人10人と法人8社が参加し、南側の島で工業塩集積所を運営する三ツ子島埠頭株式会社が1億1000万円で落札しました。同社は、自社操業への影響を考慮し、島を現状のまま管理していく方針を表明しています。

まとめ：静かに歴史と未来を繋ぐ島

三ツ子島は、現代の物流を支える重要な拠点でありながら、同時に海軍の歴史を刻む島でもあります。塩の白い風景と、静かに佇む歴史的建造物の残骸。対照的な二つの側面が調和し、独特の雰囲気を醸し出すこの島は、これからも広島湾の静かな見張りとして、その存在感を保ち続けることでしょう。

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