三バンとは
「三バン」とは、日本の
公職選挙において、候補者が有利に
選挙戦を進めるために必要とされる3つの要素、「地盤」「
看板」「
鞄」を指す比喩表現です。
本来、
公職選挙は、候補者の
政策や資質によって選ばれるべきです。しかし、実際には、後援組織の充実度、
知名度、
選挙資金の多寡が、
選挙結果に大きな影響を与えることが少なくありません。この現状を揶揄する文脈で、「三バン」という言葉が用いられます。
地盤
「地盤」とは、
政治家や候補者が、日頃から活動し、一定の支持者を持つ地域や組織を指します。具体的には、
選挙区内の支持者の組織(
後援会)がこれに当たります。地盤がしっかりしているほど、
選挙運動を有利に進めることができるため、強固な支持基盤を「地盤が固い」と表現します。
地盤は、既成の組織(
宗教団体、
業界団体、
労働組合、
政党支部など)や、個人の関係(
地縁、
血縁、同級生、趣味の仲間など)を軸に形成されることが多いです。
選挙運動においては、支持者組織が、実際に投票を呼びかける役割を担うため、「足腰」と表現されることもあります。
地盤培養行為
「地盤を養う」ための活動を「地盤培養行為」といいます。これは、表向きは、
選挙区で有権者と接触し、
政策を周知する行為とされていますが、実際には、
選挙での支持を得るための活動であることが多いです。具体的には、
選挙公示前の
戸別訪問などがあります。
公職選挙法では、
戸別訪問は禁止されていますが、地盤培養行為は
選挙運動とはみなされないため、行うことが可能です。
選挙期間前に、様々な団体に入会したり、人が集まる場所で積極的に
名刺を配ったりするなど、なりふり構わない行動に出る候補者もいます。このような
選挙活動は、「ドブ板
選挙」と呼ばれます。
「
看板」とは、候補者の
知名度を、目立つ
看板にたとえた表現です。
公職選挙法により、
選挙公報や
政見放送などで
選挙用広告は均等化されていますが、
芸能人やスポーツ選手、地元企業の社長、世襲候補などは、立候補の時点で
知名度が高く、
選挙戦を有利に進めることができます。
一方、
知名度のない「
泡沫候補」は、自分の名前をゼロから有権者に知らせる必要があり、不利な状況に置かれます。
「
鞄」とは、
選挙資金を指す言葉で、札束が入った
鞄をイメージしたものです。
公職選挙法や
選挙条例によって、
選挙活動には公費が投入されますが、実際には、
供託金、事務所経費、
後援会活動費など、多額の資金が必要となります。
また、
選挙に立候補するために退職した場合、落選すると無
収入になるリスクがあるため、資金力のある候補者や、組織に守られた候補者が有利になりやすいという側面もあります。
選挙資金を確保するために、買収などの
選挙違反行為に走る候補者もいます。
三バンの効果
世襲候補は、親や前任者から引き継いだ
後援会、
知名度、
資産という「三バン」をすべて備えており、他の候補者よりも有利に
選挙戦を進めることができます。タレント候補は、地盤は希薄な場合もありますが、高い
知名度と資金力を持ち、
無党派層の支持を得やすい傾向があります。
落下傘候補は、地盤(
後援会)が不足していることが多いですが、
知名度や資金力でそれを補うことが期待されています。一方、売名行為と見なされる常連
泡沫候補は、
知名度は高いものの、それが必ずしも得票に繋がるとは限りません。
近年では、
無党派層の増加や社会情勢の変化によって、
選挙結果が大きく左右されるようになり、「三バン」がある候補者が必ず当選するとは限りません。
地縁が強いとされる地域でも、
政策や能力よりも「三バン」が優先される時代ではなくなってきています。
選挙の見通しは不透明な部分が多く、従来の「三バン」に頼る
選挙戦略だけでは、必ずしも勝利を掴めるとは限りません。
脚注
ゲリマンダー
デュヴェルジェの法則
縁故採用
在外投票
権威に訴える論証
ハロー効果
衆人に訴える論証
衆愚
政治
甲州選挙
津軽
選挙