無産政党

無産政党とは

無産政党とは、戦前の日本において、労働者や農民などの無産階級（プロレタリアート）の利益を代表するとされた社会主義政党の総称です。これらの政党は、当時の社会情勢や法律によって様々な変遷をたどりました。ここでは、その歴史、特徴、現代への影響について解説します。

概要

無産政党は、有産階級（ブルジョワジー）に対する無産階級のための政党と位置づけられ、当時の日本では非合法とされていた日本共産党を除く、合法的な社会主義政党を指します。社会主義政党の結成自体が厳しく制限されていたため、「無産」という名称が用いられました。現代の政治でいうところの社会民主主義政党に近い存在です。

具体的には、労働農民党や社会大衆党などの全国的な政党から、地方の千葉労農党や岩手無産党のような地域政党まで、多数の党派が存在しました。分裂期には30を超える政党が乱立しました。

無産政党の一覧

主な無産政党として以下のものがあげられます。

車会党
社会民主党 (1901年)
日本社会党 (1906年)
労働農民党
労働者農民党 (1928年)
新労農党
全国大衆党
社会大衆党

歴史

第二次世界大戦前

日本の無産政党のルーツは、明治時代中頃に存在した車会党や東洋社会党のような社会主義思想を明確に掲げていなかった政治結社に遡ります。本格的な無産政党の始まりは、片山潜らが結成した社会民主党（1901年）とされています。しかし、社会民主党は結党直後に政府によって解散を命じられました。その後も、日本社会党などの社会主義政党が結成されましたが、いずれも短期間で解散を余儀なくされました。また、大逆事件によって社会主義運動は壊滅的な打撃を受け、一時的に停滞期に入ります。

第一次世界大戦後、日本国内の労資対立が激化する中で、社会主義運動が再び活発化しました。1920年には日本社会主義同盟が結成されましたが、これもすぐに禁止されました。その後、農民労働党を経て、労働農民党が結成されました。

しかし、労働農民党は、指導者層の対立や支持基盤の分裂によって、日本農民党、社会民衆党、日本労農党に分裂。労農党は左派無産政党として再出発することになりました。

1928年の普通選挙では、各無産政党が初めて議席を獲得しましたが、直後の三・一五事件によって労働農民党は解散を命じられました。その後、一部は新労農党となり、一部は非合法の日本共産党に合流しました。一方で、旧労農党のメンバーを中心に無産大衆党が結成されました。

その後、分裂していた各無産政党は、普通選挙を機に統一戦線を模索し、日本大衆党を結成しました。さらに、日本大衆党も分裂・合同を繰り返し、最終的に社会大衆党が誕生しました。社会大衆党は、戦前の無産政党の中で最大の勢力となり、1937年の選挙では36議席を獲得し、議会第3党に躍進しました。

しかし、日中戦争が始まると、社会大衆党は政府の方針に追従し、新体制運動にも積極的に参加しました。そして1940年には大政翼賛会に合流し、解党しました。

また、労農派の流れを汲む日本無産党も一時的に活動しましたが、人民戦線事件によって解散させられました。

第二次世界大戦後

第二次世界大戦後、旧社会大衆党などの流れを汲む勢力が合同し、日本社会党が結成されました。社会党は長らく野党第一党として存在感を示しましたが、一部が離脱して民社党や社会民主連合を結成しました。

戦後の社会主義政党は、無産政党とは呼ばれず、「革新政党」という用語が用いられるようになりました。また、日本共産党も合法政党として再建されました。

1990年代には、社会党は新党ブームの中で勢力を失い、社会民主党に改称しました。また、かつて「革新政党」と呼ばれた勢力も、沖縄県などを除いてその言葉は使われなくなりました。

2022年現在、戦前の無産政党の流れを汲む政党の議席数は低迷しており、社会党の流れを汲む新社会党も地方議会での活動に留まっています。

まとめ

戦前の無産政党は、日本の社会主義運動の重要な一翼を担っていました。様々な分裂や再編を経て、その流れは戦後の社会党へと受け継がれましたが、現在ではその影響力は大きく低下しています。しかし、無産政党の歴史は、日本の政治史において重要な位置を占めており、その思想や活動は、現代の政治にも少なからず影響を与えています。

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