三分損益法

三分損益法について

三分損益法（さんぶんそんえきほう）は、音階を得るための独特な技法です。この手法は、三分損一および三分益一と呼ばれる二つの方法を組み合わせて使用されます。また、現代日本の音楽においては、順八逆六（じゅんぱちぎゃくろく）という名称でも知られています。

この方法の特徴は、管楽器の管や弦楽器の弦の長さを、特定の比率で調整することによって音を生成する点にあります。具体的には、弦楽器の場合、弦の長さを三分の一短くすることにより、その音は元の完全五度高い音、いわゆる属音を得ることができます。この技法は、近代邦楽研究においては「三分一損」とも呼ばれています。

逆に、弦の長さを三分の一延ばすことによって、完全四度低い音を生成することができ、これが三分益一、またの名を逆六と呼ばれます。つまり、この二つの技術を用いることによって、音階が形成されるのです。三分損益法は、古代中国発祥のものであり、非常に古い楽理に基づいています。

この方法の記録は古代文献にも見受けられます。特に、『史記』の25巻「律書第三」には「律數 九九八十一以為宮、三分去一五十四以為徵、三分益一七十二以為商、三分去一四十八以為羽、三分益一六十四以為角」といった内容が記されています。また、『管子』の第58篇地員にも、三分損益法に関する詳細な解説が掲載されています。

歴史的には、蔡元定がこの三分損益法に基づき『律呂新書』において十八律をまとめたのが知られています。また、朱熹の『儀礼経伝通解』にもこの内容が反映されており、両者の考えは相互に関連していることが分かります。

音階作成においては、黄鐘（おうしょう）を起点とし、三分損益法を11回繰り返すことで、十二律が得られます。しかし、音の計算上では、十二律を得た後の最後の音（12番目）は仲呂となり、この後に続く音（13番目）を求めても、起点である黄鐘と同じ音は再現されません。これは、ピタゴラス音律におけるコンマによるものです。前漢時代に活躍した京房は、この13番目の音を「執始」と名付け、さらには黄鐘を基に59回繰り返して六十律を構築しました。南北朝時代の宋の音楽家、銭楽之はこれをさらに発展させて三百六十律を作り上げましたが、これらの体系は演奏の実用には結びつかなかったようです。

関連項目

• - 十二律
• - 律管
• - 五声
• - ピタゴラス音律

このように、三分損益法は音楽理論において非常に重要です。この方法がもたらした音階システムは、古代から近代まで音楽の演奏や作曲に影響を与えてきました。

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