三太号

三太号：神奈川中央交通の象徴

概要

三太号（さんたごう）は、神奈川中央交通（神奈中）が保有する特別なバスの愛称です。このバスは、1981年に神奈中が60周年を迎えた際、歴史的な意義を持つバスとして復元されました。具体的には、第二次世界大戦中に使用されていたバスをベースにしており、石油代用燃料を利用する代燃車の形態を持っています。この復元は、当時の燃料不足や厳しい環境で苦労した先人たちの努力を後世に伝えるために行われました。

三太号は、神奈中の本社総務部によって管理され、通常は厚木営業所に保管されています。特に、燃料として薪を使用していることから、「まきバス」という愛称も付けられています。

名称の由来

三太号の名称は、青木茂の児童小説「三太物語」に由来しています。この物語は1946年に発表され、1950年からは日本放送協会による子供向けラジオドラマとして放送され、多くの人に親しまれました。物語の舞台は、代燃車が活躍していた道志川流域で、主人公の三太少年やその周囲の人物たちが描かれています。津久井郡一帯は神奈中の路線エリアであり、作中のキャラクターがこのような代燃車に乗っていた可能性があることや、素朴で健やかな三太少年のイメージが神奈中の魅力と一致することから、三太号と名付けられました。

沿革

三太号の復元作業は、トヨタ・FS型トラックを基盤とし、1980年代まで使用されていた1950年発売の消防車の部品を用いる形で進められました。シャーシにはホイールベースを4メートルまで延長し、後輪をダブルタイヤに変更することによって当時の技術を再現しました。また、日産の180型（1950年式）の廃車体から車体を取得し、これをシャーシに架装しました。

バスのガス発生装置は、技術者の記憶をもとに新たに製造され、エンジンにはもとのF型エンジンを利用しながらも、ガソリンに切り替えられる機能が追加されました。1981年6月に復元が完了し、仮ナンバーを付けて神奈中の沿線各地を巡回展示しました。また、同年8月には東京の交通博物館での展示も行われ、その後も多数のイベントでお披露目されています。

1989年には公開された映画「黒い雨」で使用され、また「となりのトトロ」にも影響を与えたとされていますが、具体的な関係は明確にはなっていません。

しかし1990年代には、エンジンやガス発生装置にトラブルが発生し、特に1991年の創立70周年を前にして、修理が決定されました。発生炉は再製造され、エンジンはボーリングとスリーブ挿入で修復。1991年の夏には再度展示され、多くの人々にその姿を見せました。

当時の艤装は、神奈中のさらなる発展に寄与するものであり、1992年には北海道中央バスの代燃車製作においても三太号が参考にされました。

現在の状態

しかし2001年時点には単独での走行ができない状態に陥りました。一般には非公開でしたが、2007年に行われた小田急ファミリー鉄道展においては、展示が行われ、再び注目を集めました。

2023年10月、神奈中は約10年ぶりに薪を使ってエンジンを始動させ、営業所内を自走する様子をYouTubeで公開しました。これは多くのファンにとって感動の出来事であり、歴史を感じる機会となりました。現在も、ガソリンでの走行は不可能ですが、三太号の存在は神奈中の歴史と文化を象徴するものとして、引き続き愛されることでしょう。

参考文献

• - バスラマ・インターナショナル7号「三太号 ふたたび」
• - バスラマ・インターナショナル14号「ユーザー訪問11 北海道中央バス」
• - バスラマ・インターナショナル68号「バス事業者訪問69 神奈川中央交通」
• - 北川幸比古、保田義孝『まきバス三太号 -木炭自動車復原ものがたり』

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