三枝源次郎

三枝源次郎：映画の黎明期を支えた監督

三枝源次郎（1900年9月8日 - 没年不詳）は、映画監督、脚本家として、日本映画の黎明期から戦後のテレビ時代にかけて活躍した人物です。彼のキャリアは、日活向島撮影所から始まり、大都映画、そして戦後のドキュメンタリー映画、テレビへと広がっていきました。

生い立ちと初期のキャリア

1900年、東京府渋谷に生まれた三枝は、東京物理学校（現東京理科大学）を卒業後、1921年に日活向島撮影所に入社。細山喜代松、若山治、鈴木謙作に師事し、助監督として経験を積みます。この時期、同僚の溝口健二と親交を深め、映画について熱い議論を交わしたと伝えられています。1923年には、若山治監督の『男性の意気』で脚本家としてクレジットされています。

関東大震災により日活向島撮影所が壊滅的な被害を受けると、現代劇部は日活京都撮影所へ移転。三枝も京都へ移り、脚本家として活動を続けました。そして1924年、『民族の黎明』で監督デビューを果たします。1925年には、溝口健二が降板した『赫い夕陽に照されて』の監督を引き継ぎ、作品を完成させました。

カラー映画への挑戦と戦後の活動

1932年、三枝は大日本天然色映画で、当時としては珍しいカラー映画『奇跡の生還』を監督。1934年に大都映画へ移籍し、サイレント映画の監督として活動を再開しました。戦時中は朝日映画製作でドキュメンタリー映画を制作。戦後はラジオ映画で製作部長を務め、その後、日本テレビ放送網に入社し、テレビ番組の演出に携わりました。

再評価とフィルムの発見

近年、三枝の作品は再評価の機運が高まっています。2002年には、彼が監督したカラー映画『千人針』の一部がロシア国内で発見され、上映されました。また、1928年の作品『特急三百哩』が修復され、映画祭で上映されるなど、彼の功績が改めて認識されています。

東京国立近代美術館フィルムセンターには、彼の脚本作・監督作である『軍神橘中佐』(1926年)、『特急三百哩』(1928年)、『輝く門出』(1933年) の上映用プリントが所蔵されています。

フィルモグラフィ（一部）

三枝源次郎は、数多くの作品を手がけました。以下は彼のフィルモグラフィの一部です。

『男性の意気』(1923年) - 脚本
『民族の黎明』(1924年) - 監督
『赫い夕陽に照されて』(1925年) - 監督
『特急三百哩』(1928年) - 監督
『奇跡の生還』(1932年) - 監督
『千人針』(1937年) - 監督

参考文献

『映画年鑑 1969』、時事映画通信社、1969年
『人物・日本映画史』、岸松雄、ダヴィッド社、1970年
* 『日本映画監督全集』、『キネマ旬報』第698号、キネマ旬報社、1976年

三枝源次郎は、日本映画史において、その初期から多様なジャンルで活躍した重要な人物です。彼の作品は、映画の発展とともに、時代の変化を映し出す貴重な記録として、今後も評価され続けるでしょう。

もう一度検索