三津木春影

三津木春影（みつぎ しゅんえい）

生涯

三津木春影は、1881年10月15日に長野県上伊那郡伊那村（現在の伊那市）で生まれました。本名は一実（かずみ）です。旧制松本中学（現在の長野県松本深志高等学校）を中退後、早稲田大学英文科を卒業しました。

文学活動

当初は自然主義文学を志し、1905年に『新声』に「破船」を発表しました。しかし、1908年に押川春浪が編集する『冒険世界』に参加したことが、彼の文学活動に大きな転換をもたらします。この頃から、閃電子（せんでんし）名義で『冒険世界』、三津木春影名義で『探険世界』に、オースティン・フリーマンの「呉田博士」シリーズをはじめとする西洋の探偵小説を翻訳しました。

1914年には実業之日本社の専属となり、自らも探偵小説、スパイ小説、怪奇小説を執筆しました。特に探偵小説においては、その先駆的な存在として知られています。主な作品には、自作の「呉田博士」シリーズや、『日本の危機 間諜の密計』、『怪飛行艇』などがあります。また、モーリス・ルブランの『奇巌城』を翻案した『大宝窟王』も人気を博しました。翻訳家としても、『婦人の新修養』や『皇帝謁見少年旅行』など、幅広いジャンルの作品を手がけました。

早逝と影響

三津木春影は、その才能を惜しまれつつ、1915年7月14日に34歳という若さで亡くなりました。しかし、彼の作品は後世にも影響を与え続け、特に探偵小説の分野では、その先駆者としての評価が確立されています。没後も、遺稿集や復刊が刊行されており、現代でも多くの読者に愛されています。

家族

父親は医師でしたが、早くに亡くなりました。母親は要（よう）といい、東京女子高等師範学校を卒業後、小里頼永と再婚し、小里文子らを産んでいます。

主な著書

『日本青年亜非利加猛獣国探検』（1908年）
『呉田博士 探偵奇譚』（1911年、1912年）
『日本の危機 間諜の密計』（1912年）
『孤島の姉妹』（1912年）
『大宝窟王』（1912-1913年）
『怪飛行艇』（1913年）
『少年軍事探偵』（1913年）
『密封の鉄凾 怪奇小説』（1913年）
『コルクの釦』（1913年）
『空魔団 怪奇小説』（1914年）
『黄金の指輪 少年小説』（1914年）
『白金の時計 少女小説』（1914年）
『海底の石牢』（1914年）
『国境線 愛国小説』（1915年）
『幽霊岩』（1915年）
『噴火島博士』（1915年）
『死人の裁判』（1915年）
『地底の宝玉』（1915年）
『不思議の鈴』（1915年）
『魔尖塔 怪奇冒険探偵小説』(1916年)
『間諜団 怪奇小説』(1917年)
『三津木春影遺稿 第1』（1917年）
『海魔城 怪奇探偵』（1918年）

主な翻訳

『婦人の新修養』（1910年）
『皇帝謁見少年旅行』（1911年）
『古城の秘密 武侠探偵』（1912-1913年）
『函中の密書』（1913年）
『金剛石 冒険的大探偵』（1913年）

参考文献

末国善己による解説
横田順彌、會津信吾『快男児 押川春浪』徳間書店 1991年

関連項目

* 日本の小説家一覧

もう一度検索