三浦大四郎

三浦大四郎：映画と演劇に捧げた生涯

三浦大四郎（1928年2月4日 - 2017年6月21日）は、東京都出身の映画館経営者、映画製作者、映画評論家です。彼は、激動の昭和から平成にかけて、映画と演劇の世界で多岐にわたる活動を展開し、特に名画座「文芸坐」の経営者として、池袋の文化シーンに大きな足跡を残しました。

生い立ちと演劇への情熱

三浦は東京目黒で、山下要、ふゆ夫妻の四男として生まれました。成城高等学校 (旧制)から東京大学経済学部へと進みましたが、学業よりも幼い頃からの夢であった演劇に情熱を注ぎました。俳優としての活動に励み、その情熱は生涯を通じて彼の活動の原動力となりました。

文芸坐の経営

大学卒業後、船舶会社に就職した三浦ですが、1951年に三浦寛子と結婚し、作家・三角寛、よしえ夫妻の養子となったことで、彼の人生は大きく転換します。岳父である三角寛が経営する映画館、人世坐、文芸坐、文芸地下劇場、弁天坐の経営に携わることになったのです。三角は、吉岡英治や井伏鱒二などの著名な小説家を株主に迎え、「文士経営人世坐」として、名作とされた映画を専門に上映し、名画座としての地位を確立しました。

1952年に板橋に弁天坐、1955年に池袋東口に文芸地下劇場、翌年には文芸坐本館をオープンさせ、事業を拡大しました。しかし、1959年には人世坐で従業員による労働争議が発生し、経営は一時的に困難な状況に陥ります。三角寛の死後、三浦は経営に復帰しますが、その間に人世坐と弁天坐は手放されており、残されたのは文芸坐と文芸地下劇場の2館のみでした。復帰後、三浦は老舗名画座としての独自の番組構成を追求し、多くの映画ファンから支持を集めました。

演劇への情熱と池袋演劇祭

映画館経営と並行して、三浦は幼い頃からの夢であった演劇の世界にも深く関わりました。五月舎の立ち上げから経営に加わり、製作者として活動するなど、その情熱は衰えることを知りませんでした。

1997年、文芸坐は閉館。長年にわたり池袋の文化を支えてきた三浦は、映画興行界の衰退という時代の流れには逆らえませんでした。同年、妻寛子も亡くし、心血を注いできた映画館と伴侶を相次いで失うという悲劇に見舞われます。しかし、彼はその後も映画や舞台と親しみ、交流を続けました。豊島区舞台芸術振興会会長として「池袋演劇祭」の立ち上げに尽力し、2016年まで実行委員長を務めるなど、演劇界への貢献も忘れませんでした。

受賞と著書

三浦の映画界への貢献は高く評価され、1983年度には日本映画テレビプロデューサー協会特別賞と日本映画ペンクラブ賞、1989年度には山路ふみこ文化財団特別賞を受賞しています。また、著書として『人世坐三十五年史―焼け跡から文芸坐まで』を著し、映画館経営の歴史を記録しました。

家族

妻は昭和初期に活躍した山窩小説家の三角寛の娘で日本舞踊・林流の林寛子。兄に東京大学教授・ドイツ文学者の山下肇、ロシア文学者の泉三太郎（山下三郎）らがいます。父方は日興証券創業者の遠山元一の親類にあたり、母方の親類に評論家加太こうじがいます。長女は日本舞踊・林流千永派家元の林千永、孫は歌舞伎役者の二代目市川青虎という芸術一家でした。

三浦大四郎は、映画と演劇への深い愛情と情熱をもって、池袋の文化を豊かにし、多くの人々に感動を与え続けた人物でした。彼の遺した足跡は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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