三浦洋一 (ピアニスト)

三浦洋一：伴奏に生涯を捧げた名ピアニスト

三浦洋一（みうら よういち）は、1933年3月24日に愛知県名古屋市で生まれ、2009年1月22日に75歳で生涯を閉じた、日本を代表するピアニストです。彼は特に歌曲や合唱の伴奏者として、その卓越した技術と音楽性で、多くの声楽家から絶大な信頼を得ていました。名古屋市立菊里高等学校を経て、1955年に東京芸術大学ピアノ科を卒業、1956年には同専攻科を修了しています。遠山つや、ハンス・カンに師事し、1958年にデビューリサイタルを開催しました。

日本を代表する伴奏ピアニストとして

三浦洋一は、東京放送合唱団、二期会合唱団、日本女声合唱団など、数多くのプロ・アマ合唱団の伴奏ピアニストとして活躍しました。木下保、畑中良輔、伊藤京子といった日本を代表する声楽家たちのリサイタルやレコーディングにおいても、その才能を発揮しました。畑中良輔監修の「日本歌曲全集」では、23人の歌手全員の伴奏ピアニストを務めたことからも、彼の伴奏者としての圧倒的な実力が伺えます。

彼のレパートリーは古典から現代曲まで幅広く、日本の声楽家のみならず、エットーレ・バスティアニーニ、フェルッチョ・タリアヴィーニ、ジェラール・スゼーなど、海外の著名な声楽家や演奏家の来日公演でもピアノ伴奏を担当し、楽界から高い称賛を受けました。

ソロ演奏と教育活動

伴奏者としての活動が中心であった三浦ですが、1988年には瀧廉太郎没後90周年記念企画の一環として、瀧の作曲したピアノ曲『メヌエット』と『憾』を世界で初めてCDにレコーディングしました。これは彼のソロ演奏家としての側面を示す貴重な記録です。

また、後進の育成にも尽力し、桐朋学園、名古屋音楽大学で教授を務めました。名古屋音楽大学名誉教授としても、音楽教育に貢献しました。

人柄とエピソード

三浦は、伴奏という演奏スタイルを心から愛していました。ある時、ファンから「ご自分のリサイタルはなさらないのですか？」と聞かれた際、「ボクは伴奏という演奏スタイルがこの上なく好きなんです」と答えたそうです。伴奏の依頼は一般のピアニストにとって「頼まれ仕事」になりがちですが、三浦はプロの伴奏ピアニストとしての誇りを持ち、多くの演奏家から指名され、ゆるぎない地位を築きました。

彼の功績を記念して、中田喜直記念コンクールには最優秀ピアノ伴奏者賞「三浦洋一賞」が設けられています。

趣味のスポーツではスキーが得意で、プロスキーヤーの三浦雄一郎と名前が似ていることをネタにしていたそうです。毎年冬には、畑中良輔や慶應ワグネルの団員たちと志賀高原にスキーに行くのが恒例でした。

2009年3月24日には、「洋ちゃんを偲ぶ会」がサントリーホール小ホールで開催され、多くの音楽関係者が彼の死を悼みました。会の中で、伊藤京子や瀬山詠子は、三浦の伴奏について「ほとんど打ち合わせをすることもなく、歌っていてここで前へ出たいなと思うと自然に伴奏もそうなる」と、その卓越した感性と技術を称賛していました。

三浦洋一は、その生涯を伴奏に捧げ、日本の音楽界に多大な貢献を果たした、偉大なピアニストです。

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