三菱・ギャランクーペFTO

ギャランクーペFTO

ギャランクーペFTO（Galant Coupe FTO）は、かつて三菱自動車工業が製造・販売を手がけていた2ドアクーペタイプの乗用車です。1971年 11月に市場に投入され、既に存在していたスポーティーモデル、コルトギャランGTOの弟分という位置づけで開発されました。約4年間の短い販売期間を経て、1975年 3月に生産を終了しています。

車両概要と特徴

ボディタイプは、5人が乗車可能な2ドアクーペで、ファストバックとノッチバックを組み合わせたような独特のセミノッチバックデザインを採用していました。そのプロポーションにおける最大の特徴は、ワイドなトレッドに対しショートに設定されたホイールベースにあり、これにより個性的かつスポーティーなスタイリングが実現されていました。設計にあたっては、コスト効率と開発期間の短縮を図るため、当時の主力車種であったギャランシリーズと多くの基本コンポーネントを共有していました。ボンネットはコルトギャランから、ドアはコルトギャランハードトップやギャランGTO、2代目ギャランハードトップといった既存モデルの部品を転用。足回りやパワートレインといったメカニズム面も、コルトギャランからの流用が多く見られました。しかし、初期に搭載されたエンジンに関しては、デリカなどの商用車用に新開発された1.4リットルOHVの4G41型が採用されるという、独特な成り立ちを持っていました。

エンジンとメカニズムの変遷

1971年 11月の発表・発売当初は、新開発の1,378cc 直列4気筒 OHV 4G41型「ネプチューン」エンジンのみが搭載されました。このエンジンにはシングルキャブレター仕様（グロス86馬力）とツインキャブレター仕様（グロス95馬力）があり、それぞれ「G I」および「G II」（シングルキャブ）、「G III」（ツインキャブ）という3つのバリエーションが設定されました。

主要な変化は、1973年2月のマイナーチェンジで訪れます。この改良では、新たなエンジンラインアップが追加されました。従来の1,400ccモデルは、商用車由来のネプチューンエンジンから、新世代の1,439cc 直列4気筒 SOHC 4G33型「サターン」エンジン（グロス92馬力）へと換装されました。さらに、シリーズ初の1,600ccモデルとして、1,597cc 直列4気筒 SOHC 4G32型「サターン」エンジンが追加されたことが特筆されます。この1600ccサターンエンジンには、シングルキャブレター仕様（グロス100馬力）とツインキャブレター仕様（グロス110馬力）があり、特に後者はFTOのスポーツ性を象徴する存在となりました。

トランスミッションの面でも、1973年の改良で大きな進化が見られました。1600シリーズには、新たに5速マニュアルトランスミッション（MT）が組み合わされ、よりスポーティーな走行性能を追求できるようになりました。1600ccモデルのグレード展開は、シングルキャブに「SL」、ツインキャブに「GS」および「GSR」が設定されました。中でも「GSR」はシリーズの頂点に位置するホットモデルであり、専用のオーバーフェンダーが装着されるなど、FTOのスポーティーなイメージを一層高める役割を担いました。一方、1400シリーズは、「EL」「GL」が4速MT、「SL」が5速MTという構成でした。

モデルライフ中の改良とラインアップの整理

販売期間中、ギャランクーペFTOは何度かの仕様変更を受けました。1973年10月には一部改良が行われ、GSRのフロントグリルやステアリングホイールのホーンパッド部分のデザインが変更されました。

しかし、当時の自動車を取り巻く環境の変化もモデルに影響を与えました。1974年8月には、保安基準の改正による安全対策の強化に伴い、トレッド幅の拡大を伴うオーバーフェンダー付きのGSR仕様が一旦廃止されることになりました。これは、車幅に関する新たな規制に対応するためでした。

その後の1974年10月に行われた一部改良では、一時的にラインアップから姿を消していたGSRが、保安基準に適合させるためオーバーフェンダーを取り外す形で復活しました。この改良では、全体のグレード体系も見直され、1,400ccのEL、1,600ccのGS-5（5速仕様）が廃止されました。最終的なラインアップは、1,400ccのGL、SL-5、1,600ccのSL-5、そしてGSRという4グレードに集約され、バリエーションが整理されました。

販売終了とその後の影響

ギャランクーペFTOは、1975年 3月に生産・販売を終了しました。その後、そのポジションを受け継いだのは、同じく三菱自動車から登場したクーペモデル、ランサーセレステでした。ギャランクーペFTOは、そのユニークなプロポーションと、特にGSRグレードに代表されるスポーティーな性格により、短いながらも日本の自動車史にその名を刻みました。後の時代には、車名のみを引き継いだ全く新しいコンセプトのスポーツカー、三菱FTOが登場することになります。

車名の由来

「FTO」という名称は、イタリア語の「Fresco Turismo Omologato（フレスコ・ツーリスモ・オモロガート）」の頭文字から取られています。これは直訳すると「公認された新鮮なフィーリングを持つ車」という意味合いを持ち、ギャランクーペFTOが目指した軽快かつスポーティーなキャラクターを表現しています。

もう一度検索