三菱MC-20

三菱 MC-20の概要

三菱MC-20は、三菱重工業が手がけた日本の旅客機で、当初は大日本帝国陸軍の軍用輸送機である一〇〇式輸送機（キ57）の民間型として開発されました。日本の戦前における国産旅客機を代表する存在でもあり、中島飛行機のAT-2などと並ぶ重要な機種です。この機体はまた、中華民国や満洲国に輸出されたことでも知られています。

開発の背景

キ57は、中島の九七式輸送機の後継機として設計された双発輸送機です。九七重爆撃機一型（キ21-I）を基にしており、エンジンや主翼の設計を流用しつつ、機体を再設計して完成しました。特に優れた性能を持ち、高速性と輸送能力を兼ね備えたこの航空機は、当時の日本国内でも注目の的でした。

1940年に完成したキ57は、陸軍によって一〇〇式輸送機という名称が付けられ、戦争の初期段階における主力輸送機として広く運用されました。特に、太平洋戦争初期におけるパレンバン空挺作戦では、陸軍落下傘部隊の輸送を担当するなど、重要な役割を果たしました。

MC-20の登場とその運用

この機体の民間型であるMC-20は、1940年9月に羽田飛行場で完成披露が行われました。合計で4号機となるその機体は、大日本航空によって「妙高」号と命名されましたが、運用開始からわずか数ヶ月後の1940年12月28日、試験飛行中に東京湾に墜落する事故が発生し、搭乗していた14名全員が犠牲になってしまいました。この事故の調査により、昇降舵のフラッターが原因とされ、その後の機体はバランスウェイトの改修が行われました。

MC-20は大日本航空の他にも、満洲航空や中華航空（現在のチャイナエアラインとは別企業）でも使用されました。また、朝日新聞や読売新聞、大毎東日新聞などが社用機としても利用し、特に朝日新聞の「朝雲」号は、通信機材や暗室を備えた「空飛ぶ編集室」として知られました。

さらに、終戦後にはいわゆる緑十字飛行に使用されたり、YS-11が飛ぶまでの間に最後の国産旅客機として活動しました。

MC-20-IIの登場

1942年には、一〇〇式輸送機二型（キ57-II）と技術を共有する形で、エンジン換装などが行われた二型相当のMC-20-IIも登場しました。この区分けにより、従来の機体はMC-20-Iとして区別されることになりました。三菱による生産数は、一〇〇式輸送機とMC-20を合わせて1型が101機、2型が406機の合計507機に達します。この生産数は、日本の輸送機史上、最多のものとされています。

MC-21と派生機体

旅行客用としては、MC-21という機体も存在しました。これは九七重爆から武装を取り外し、貨物輸送に利用されることを目的としたもので、乗客収容数を8席に変更できる機能も持っていました。読売新聞もこのMC-21を4機運用しました。

機体性能 (MC-20-I)

• - 運航乗員：4名
• - 乗客：11名
• - 全長：16.10 m
• - 全幅：22.60 m
• - 全高：4.90 m
• - 翼面積：70.08 m2
• - 空虚重量：5,522 kg
• - 全備重量：8,437 kg
• - エンジン：ハ5改空冷星型14気筒（出力950hp）×2
• - 巡航速度：320 km/h
• - 最高速度：430 km/h
• - 航続距離：1,500 km（通常）/ 3,000 km（特別）
• - 最高到達高度：7,000 m

MC-20は日本の航空機の歴史の中で重要な役割を果たし、その優れた性能と多様な運用形態により、戦前から戦後にかけての航空業界に大きな影響を与えました。

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