緑十字飛行

緑十字飛行（みどりじゅうじひこう）

緑十字飛行とは、太平洋戦争の終戦関連の事務処理を目的に、1945年8月19日から同年10月10日まで日本の航空機によって行われた活動を指します。この過程で使用された航空機は「緑十字機」と名付けられました。

由来

緑十字飛行の名称は、1945年8月15日に発表されたポツダム宣言を受けた進展に起因しています。連合国軍最高司令官となったダグラス・マッカーサーは、8月16日に日本政府に対し、代表団のアメリカ領マニラへの派遣を要請しました。混乱を防ぐため、マッカーサーは機材の選定や外装、通信波長まで細かく指示し、特に機体の塗装について「全面を白色に塗り、胴体の中央部に大きな緑十字を描け」と指示しました。これにより、「緑十字飛行」と「緑十字機」という名称が生まれたのです。

この飛行は、初めて8月19日に日本本土と伊江島の伊江島飛行場の間で行われ、その後、伊江島からマニラまではアメリカ軍機によって輸送されました。厚木航空隊の事件が発生する中、抗戦派の妨害が懸念されたため、緑十字機はアメリカ軍機の護衛を受けていましたが、実際には攻撃されることはありませんでした。

機材と路線

連合軍の日本上陸後、日本の航空機による飛行は原則として禁止されていましたが、日本政府の要請により、終戦に関する事務処理のための飛行がGHQの許可のもとで実施されることになりました。許可された機材と航空路は以下の通りです。

• - 機材: MC-20、ダグラス DC-3、九七式飛行艇（大日本航空）、九七式重爆撃機、一〇〇式輸送機、一〇〇式司令部偵察機（陸軍）、一式陸上攻撃機、機上作業練習機「白菊」など、計27機。
• - 航空路:

- 第一航空路: 東京－大阪－福岡
- 第二航空路: 東京－名古屋－大阪－高松－岩国－福岡
- 第三航空路: 東京－仙台－青森－札幌
- 第四航空路: 東京－新潟－富山－福知山－大阪

この活動に参加した組織は、海軍250名、大日本航空50名、陸軍50名の計350名からなる混成組織で構成され、輸送対象は終戦に関する緊急事務処理に必要な人員や郵便物、貨物が含まれていました。

緑十字飛行は1945年10月10日、GHQからの航空機全面禁止指令により終了し、その後、1951年に日本航空による民間飛行が始まるまで、日本の航空機の運行は途絶えていました。多くの緑十字機は役割を終えた後、飛行場に放置され、後に解体されました。

事故

1945年8月19日、敗戦直後に降伏全権団が木更津海軍飛行場から沖縄県の伊江島に向かう途中、アメリカ軍からの指示で輸送されました。日本からフィリピンへ向かう過程で、伊江島からアメリカ軍機に乗り換えてマニラに到着し、最高指揮官マッカーサーによる降伏要求文書を受け取った後、緑十字機で帰路に就きました。しかし、8月20日深夜、帰路の途中で事故が発生し、遠州灘沖で不時着しました。

この事故では、全権団のメンバーに怪我はなかったものの、降伏要求文書は近隣住民の助けを借りて全て回収されたとのことです。帰還後、代替の航空機を用いることになりましたが、事故機は放置され、後に部品が持ち去られると共に、台風により水没し、その行方は分からなくなりました。2006年には一部の残骸が発見される等、その後の調査は続いています。

この事故に関しては、例えば整備ミスではなく、意図的な行為の可能性も浮上しており、今なお真相は不明です。

参考文献

• - 全日空30年史編集委員会『限りなく大空へ 全日空の30年』全日本空輸株式会社、1983年。
• - 平和へのラストフライト〜緑十字機が運んだ“終戦”〜 静岡朝日テレビ制作 2016年。
• - ザ・スクープスペシャル 緑十字機 決死の飛行 〜誰も知らない“空白の7日間

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